殺し屋さんと「ですげーむ」
私の名前は「時計屋」、名うての殺し屋さ。金額しだいで、あとノリと勢いと、面白さと、なんだかんだ色々大切な感情なんかで、どんな相手でも確実に殺してやるぜ……結構限定されてるな。依頼達成率200%はダテじゃないんだぜ、私にかかればターゲットが二回以上殺されることも、日常茶飯事さ!
私の腕前を風の噂で聞いて、連日依頼の連絡がひっきりなしだ、そろそろ美人の秘書もさばききれなくて、悲鳴を上げているぜ。
さて、今日の依頼だが……なんと、私に電脳世界へダイブして殺しをして欲しいという変わったものだ。サイバーパンクな話だぜ。言われたことは素直に聞くご近所でも評判の、性格の良い私だから、もちろんこの依頼も了承したぜ。良い性格をしているだったか?
殺しのターゲットは趣味で殺しをたしなんでいるという大富豪だ。あの手この手で犠牲者を無力化して、嬲り殺しにしているらしい。なかなか下種な趣味だぜ。最近のお気に入りは、時代の最先端をいくVRMMORPGのデスゲームらしい。何のことだ?
私は、美人で有能な秘書に素直に疑問をたずねたぜ。素直な心も私が持つ108の美徳の一つなのだ、残り107の美徳はまた今度の機会にゆっくりと語るとしよう。なに、いらない?そんなことを言うなよお客さんお安くしておくよ。おつりは鉛の弾でよろしいかな。謙虚だろ?これも美徳の一つさ。
と、VRMMORPGのことだったな、ええと、「VR=ばーちゃるりありてい」というのは、ようは電脳世界ということか?人の意識を電子データにして、実際と変わらない世界を再現する?なるほどな、わからん。……違う世界へ自分が行くようなものか?旅行のようなもの?違うどちらかというと夢の世界と?まあ、だいたい分かった気がしますよ、多分。
で、同じように夢をみている連中がそこにいて、話とかしつつ、「RPG=あーるぴーじー」をしていると。「あーるぴーじー」とは、「ろーるぷれい」の「げーむ」ということで、参加者は何かしらの役割を持ちつつ遊戯をする、と、つまりごっこ遊びだな。風呂敷をマントに、新聞紙を丸めたものを刀にみたてて、路地裏で、怪人役の友達と、遊んでいるやつだ。……だいたい近いが、たとえが古いとな?古き良き時代だったんだよ、いや、私は若いので、良く知らないが。
「ですげーむ」は知っているぜ、あれだほれ、「ろしあんるーれっと」みたいなやつだ。リボルバータイプの拳銃に、弾を一発いれて、交互に自分のこめかみにあてて引金を引くゲームだな、私は勝率120%なんだよな。……なんか違う?普通に殺し合いをすること?死んだら死ぬ?当たり前じゃないか?……はあ、そもそも「げーむ」だから死んでも死なないのが普通?それは死んだとは言わないんじゃないか?なるほど、夢で死んでも目が覚めると、現実ではなんともなってないようなものか。
じゃあ、なんで「げーむ」で死ぬんだ?夢での死の現実感が凄いので本当に死んでしまう?なんだそれは?……ショック死みたいなもの?強力な暗示に近いわけか、つまりなにか、本来の「げーむ」の仕様だと痛みとか感じないから、死なないが、その現実感の再現度を極めて高く設定して、本当に死んだと肉体に勘違いさせると?それ、ずぶといやつだと死なないですまないか?私の知り合いにも「生ける屍”りびんぐでっど”」とか呼ばれる同業者がいるけど、そんなやつとかは、それじゃ死にそうにないなあ。……現実世界で不死身なのは例外?この業界そういうやつがごろごろいそうだが?私もよく殺しても死なないやつとか言われているしな。……ターゲットの大富豪は殺せるから問題ないでしょう?なるほど。
まあ、どんな所でも、私の「爆弾」があれば、綺麗にターゲットを吹き飛ばすことができますよ。え?「ですげーむ」のゲーム世界は、「ふぁんたじー」の世界?それがどうしましたか?「ばくだん」が無いの?やばいじゃん!おれ爆弾がないと一般人だよ?ただの美女にモテモテの陽気な美青年さんだよ?
……設定をいじって、現実で使う装備を使えるようにできる、先に言って下さいよもー。おにーさん焦っちゃったじゃないかぁ。ええと?「ちーと」だからあまりやりたくなかった?「ちーと」って?……なるほど”ずる”のことね?だけど私もともと「殺し屋」だよ?倫理観とかいろいろぶっちぎっている職業ですよ?いまさらねー。
じゃあ、色々用意して、いってみるかな?なに?このヘルメットみたいのをかぶるの?私の綺麗な顔が隠れない?え?夢の世界の中ではかぶってないの、それならいいや。で、これをかぶって寝ると、「ですげーむ」が始まると?愛用の武器は?電子データのオリジナルアイテムとして、登録してあると?用意いーね。さすが、私の美人秘書さんです。
みょん、みょん、みょうーん。なんだこの気の抜ける音は?「ろぐいん」の音?夢の中へ入るときのお約束って、誰が約束したのさ。あれ、秘書さんと会話できるね。「なびげーた」として登録してるのか、「なびげーた」って?ああ案内人ね旅先案内人、今回は夢中案内人?なるほど。
「きゃらくたーめいきんぐ」?なにこれ?……なるほど、本来ならここで夢の中で動かす身体の設定を作ると。今回は「ですげーむ」仕様なので現実の姿形そのままで?殺し屋さん顔ばれするのは問題じゃない?いや、確かに業界でも顔の知られた私ですけどね。しかしこれ整形とかしていたらどうなるのでしょうかね?「魂=えご」に刻まれた姿形になる?私知り合いに、大宇宙的恐怖な怪物君がいるのですが、彼?彼女?がこのゲームに入った時にはどういう造型になるのでしょう?……一目見られると、正気を失ってしまうような気がしますが。現実でのあのお方の「殺し方」と同じですねー。
「じょぶ」?職業ですか?ここはもちろん殺し屋ですね。……あるんですか本当に?意外と自由ですねー。……意外に人気あるんですか殺し屋?倫理観とかどうなっているんでしょうか?山賊とか海賊とか、泥棒とか怪盗とか、自由の闘志とか?けっこうきわどいお仕事が選べるんだねー。……もともと法をかいくぐっているようなゲームなんだ。なにそれ?大丈夫この国?大丈夫じゃないから、殺し屋へ依頼が来ると、なるほどなっとくの”な”ですね。……古い?いや私も元ネタは知らないですよ、本当だよ?
「ちゅーとりある」?解説ですか?説明書を読まなくてもこれを受けていれば、ゲームがスムーズに始められる?と、パスしましょうか?え、受けろ?やですよ面倒くさい……。身体に悪戯するのはやめてください、分かりました、やります。喜んで。よっほいさっと。身体の動きは現実世界と殆どかわりませんね?物理法則とかどうなっているんでしょう?夢だから結構いい加減かとおもったけど、なかなかどうして、しっかりしていますね。
武装は爆弾ですね、いつもの小型手投げ型と、設置型、時限式も問題なし。各種感知式の、熱、動態、光学、音声式も違和感なし、追尾式、遠隔操作、と。ひととおり技を試してみましょう……問題ないですね。使った爆弾が自動的に補充されているのが、さすが”夢”の世界ですねー。……手品みたいに、どこらかでも、出てくるのは現実と同じですが。も少し模擬戦の難易度が上でもいいですね、……え、すでに最高ランクの上で地獄級?ほんとに?……なんです、「りあるちーと」って?褒めてる、いやーそれほどでも、ありますよ。
げーむの始まりは、「始まりの街」というところの中央広場、で、そこで「ですげーむ」の宣言があると。他の一般プレイヤーと同じくターゲットの殺人趣味の大富豪もそこにいる?なるほど、発見後速やかに排除ですね。で、しばらくなりを潜めていて、「ですげーむ」状態の解除をまつと。今回の「ですげーむ」は大富豪を始末するための「やらせ」だけど、システムの都合上すぐに解除できないから……っと。2、3日くらいは隠れているように?おーけーおーけ、かくれんぼなら得意だよ、いつも最後まで見つからなくて、友人達が見つけるのを諦めていたものさ。そのまま、みんな帰ってしまったくらいだよ。……いじめられてたんじゃないよ、いや本当。
でわスタートボタンを押して、これで、時間がきたら始まるわけね。
おお、これがゲームの世界かぁ。風とかも感じるよ、夢のようだぜ。有象無象がひしめいているな、視界に入るだけで、数百人はいるな……ゲームの参加者は1万人くらいですか?結構多いんじゃないかな秘書さん?というか、見知った顔がちらほら……そこそこ……ぞろぞろ?なんだか同業者(殺し屋)ばかり見えるような気がするな?ということは、やっぱり、あの悲鳴とか、叫声とかが上がっている一帯には……いるなー。大宇宙恐怖的殺し屋が……秘書君秘書君?あーナビゲート用の画面越しでも結構正気を持っていかれているなー、反応がないや。私は耐性があるから、大丈夫だけども、他の連中はなー。……私に正気が元々無いから平気というわけじゃないんだぜ?バタバタと倒れているなー、なむなむ。というか錯乱して自身の殺しの技が暴発している連中の方が厄介だな?ナイフやら拳銃の弾丸やらが所構わず飛び交っているや。日本刀の殺し屋さんもいるね、というか通路とか建物ごと切り裂いているね、あれもまあ正気じゃないんだろうなー……いや彼は現実でもそれほどかわりなかったかな?
なんだか、周囲がこれほど暴走していると、かえって冷静になるなぁ。おっと、こちらにも飛び火したか。ひょいと、火炎放射器の炎をよけて、ぽん、と、「はんどぐれねーど」、たまやー、うん吹っ飛んだ吹っ飛んだ。致命傷を与えると、電子の渦のようになって消え去るのね。あーなんだか大きな声が聞こえるね、「ですげーむ」の開始を告げる声の用だけど、あまり皆聞いていないね。夢の世界から現実世界への帰還が不可能で、夢の世界での死亡は現実のそれと等しいうんぬんと、うん、前情報と同じだけど、周囲の参加者はそれがどうした、と言わんばかりに己の職業倫理にしたがって真面目に働いているなー。職業が殺し屋でなければ建設的な光景になるんだろうな……。
ところで、本当に、殺し屋さんしか回りにいないような気がするんだけど?そこんところどうなっているのよ?……あ秘書さん復活しましたね。……偉大なるあのお方とか言ってるけど、まあ、再起動はしたみたい……で、どうよ?なんだかちょっと同業者が多いような気がするよ(控えめな表現)。
ふんふん、同じようにターゲットが電脳空間へ誘い込まれているお仕事が、重なったのでまとめたようです、と?誰がまとめたの?技術者?このゲーム、同業者がひしめき合って、混沌としていますよ。殺し屋は、混ぜるな危険ですよ。加えて同じターゲットに複数の殺し屋さんが割り当てられていると?……だめじゃんそれ?ターゲット1人に対して、100人の殺し屋さんですか、現在の参加人数1万人に対して、殺し屋さんが、9,900人?盛り過ぎだろう。対象の奪い合いとか、起こるに決まっているじゃないの。ええとちなみに私のターゲットは?……見事にお亡くなりになられているわけね。やること無くなったですね、私何もやってないんだけどな……。じゃあ、この混乱を抜けて隠れていればいいだけですね。
……殺し屋さんしか残っていない「ですげーむ」ってのもシュールだなー。
おっと、あそこにいるのは、知り合いの鋼線使いだね、軽く会釈して、「殺りあいますか」って、いやしないから、私そういうキャラクターじゃないですから、けど、降り掛かる火の粉は吹き飛ばさないといけないかなぁ。……秘書さん、私の笑みが怖いって?……失礼な。
うん、意外と楽しいじゃないか「ですげーむ」。現実とは違って、これだけの面子が一堂に会することができる、というのが夢の世界らしいですね。……悪夢じゃないですかって?何うまいことを言っているのですか秘書さん。では、逝ってきます。ひゃっほう!
「ですげーむ」が外部から強制終了するまで、殺し屋さんたちは思う存分楽しんだようです。
どっとはらい




