第七章「不可解な火事」
第七章「不可解な火事」
エリックは鼻にツンと異臭が感じたのがわかった。それだけじゃなく、
鼻から口に異臭がきて咳き込みそうになったが、
金縛りのせいか、それもできない。やがて、パチパチという激しい音が耳に聞こえ始めた。
それと同時に、鼻にくるツンとした異臭がどんどん強くなってくるのもわかった。
そして、眼がにじむのも。くらくらしてきたエリックの頭でも、コノにおいがなんなのかは
わかった。煙だ──。金縛りにあってはいても、煙の刺激のせいで咽そうになる。
それがやりたくてもできない…。だめだ…、煙が体中にまわって来たのがわかった。
苦しい。肺がしめつけられたような痛さ。閉じている眼にも、ズキンズキンという刺激が
き、どんどん涙が溢れてくるが、それを流すことさえできない。肺が痛い…むせる…。
やがて、エリックの寝ているベッドが焼けてくる。ダメだ…火を消すどころか、逃げることも
できない。もう…絶えられない。のたうちまわりたい程苦しいのに、それもできない。
これ以上は無理だ…。僕は死んでしまうのか?エリックは逃げられないという、絶望の中
で感じた。苦しい、苦しい、苦しい…。死にたくない…助けてくれ!エリックはあらん限り大声で
叫んだ…つもりだったが声が出ない。やがて、火の音が自分の耳のすぐ近くに聞こえてきたとき、
もう助からないのだとわかった。死の間際を実感した。僕はこれから死ぬんだ…。
死にたくない、といったものの、何故か死を怖がっていない自分に気づいた。もうどうせダメだ…。
エリックは絶望という名の炎の中でも絶対に胸の碇の首飾りと、父がくれた【ANCHOR】という本を
放さなかった。絶対に…死んでも放すものか。エリックは死の間際で初めて「死んでも…」という言葉を使った。
そのとき、エリックの部屋の扉が勢いよく開く音を耳にした。
彼の意識はその瞬間に遠退いた……。
……ここ…どこ?エリックが起き上がってまず発した言葉がそれだった。
だがその声は、自分の声とは思えない程掠れていた。さっきの煙のせいだろうか…。
エリックはさっきの火事を思い出した。ちゃんと、それこそ怪しいくらいに正確に覚えている。
あの煙、あの苦しさ…。思い出すだけで吐き気が催してきた。
で…ここは何処なんだ?眼を開いてはいないものの、雰囲気とこの臭いで自分の家ではないこと
くらいわかった。物凄く薬くさいのだ。さっきの煙よりはマシだけど…。?さっき?そういえば、
あれからどれくらいが経ったのだろう…。一時間?一日?それとも一週間?エリックはくらくらする
頭で考えた。実際火事のときよりは楽だがやはり気持ち悪い。まず、時計を見ないと…カレンダーも
あるといいのだが。エリックはゆっくりと目を開けた。瞼が重い。それでもなんとか開けたら、
眼が涙ぐんでいた。エリックは左手でそれを拭うと、ゆっくりと起き上がった。身体は動くらしい。
彼はゆっくりと部屋を見回した。頭と眼がくらくらするがなんとか、一通り見回してみた。
白、白、白──。なにもかもが真っ白な部屋だった。これで正確にエリックの部屋でないことがわかった。
時計は…、あった。これまた白い時計。その時計は短い針が9を、長い針が5を指していた。
9:25か…。問題は午前か午後か、だ。時間を確認してからもう一回部屋を見回した。カレンダーは
ないようだ。エリックは仕方なくまたベッドに横たわった。時間はわかったが日にちがわからないエリックが
今すること、それは自分の身体の状態を把握することだ。残念ながらこのくらくらの頭では自分の状況などを
考えることはできない。使えない頭で考えるよりまず、自分の状態を調べることにした。
エリックはまず手を動かした。長い間の金縛りのせいか、手が少し固まっていた。
だが、動かすことはできる。当分ベッドから起き上がれなさそうだから、足はまだ良い。次は眼だが、
眼は開けられた(というより今も開けている。)から良い。残るは口と耳だ。まず耳を確認することにした。
エリックはベッドの鉄格子のところを手でたたいてみた。手は痛かったが幸いカン、とう音が聴こえた。
耳が終わると最後は口だ。まず簡単な単語から発音してみたが、やはり掠れている。エリックは何度も
せきをしながら発音したおかげで前よりはマシになってきた。口はokとするか…誰もいないのだし。
エリックは取り合えず自分の身体に異常がないことがわかると、安心して胸にある碇の首飾りを
握った。──つもりだった。碇が…、ない!エリックは声にならない奇妙な程掠れた声で叫んだが、
その声は低く、そして小さかった…。
今日は更新送れてすみませんミ☆(o_ _)ozzz
これからが本格的に始まるので
ご愛読よろしくお願いします。