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第二十一章「養子と施設」

★第二十一章「養子と施設」


大丈夫だろうか…。レザックはずっとエリックのコトを

考えていた。

父親に裏切られ、母親が死んでしまって…、

絶望に浸されているだろう。

別れ際の彼には生気がなかった…。

本当はずっと彼のそばにいたかったが、

それもしょうがない事だ。

ストゥービング警部に彼と会う時間を決められたのだ。


  二十分──。


少なすぎる。実際エリックとレザックが話し合ってた

時間は三十分以上で、帰ってからストゥービング警部に

長時間の説教が食らった。

それでもレザックは後悔していた。

もっと怒られてでも、彼と話すべきだった…。












 「おい、どうだった?」ラルフが心配そうにレザックの顔を

 覗き込む。



「……何が?」答えるのが辛くて、レザックは恍けた。

「何がって…、エリック君のことだよ。当たり前だろ?」

ラルフは苛々と訊いてくる。


「彼は気づいていたよ…。僕が犯人は君の父だって

言う前に言ってきた。犯人は父だろう、って…。」

レザックは悲しそうに言った。自分が情けなくてしょうがない。

「そう…なのか…。勘の良い少年だな…。」ラルフは固まった

表情で言った。







「なぁ…、彼はこれからどうなるんだろう…?」

レザックは目の前に居る、ラルフに訊いた。

「どうって…、身内が居ないんだから…、施設じゃないのか…?」

ラルフは答えにくそうに言った。「施設って…、叔母さんがいるんじゃ

ないのか?」レザックは縋り付くように訊いた。

「叔母はいるみたいなんだけど…、面倒が看きれないって…、

ホラ、彼の叔母は、エリック君の祖母の面倒を看ているみたいだから…。」

レザックは項垂れた。

施設へ入るなんて…、両親を亡くして只でさえ心が痛んでいるのに、

その上施設に預けるなんて…。彼から希望とともに、

自由まで奪ってしまうのか…。









「なぁ…、ラルフ、エリック少年は養子になればいいんじゃないかな…?」

レザックは少し考えて唐突に言った。

「えっ?あっ…、養子、ね。でも、養子なんて簡単になれるもの

じゃない。引き取り人が来るまで等分施設暮らしだろうな…。」

「養子って…、誰でも良いのか?」レザックはラルフの言葉を

遮って訊いた。

「誰でもってわけじゃないだろうな。まず、金にゆとりがないと。

物凄い金持ちってわけじゃなくてもいいけど、取り敢えずアノ少年が

ちゃんと暮らしていけるくらいの金はないと。

ホラ、あの年だから学校も行かなくちゃならないからな。」

ラルフは考え考えに言った。

「そうか…、僕の給料では…、無理…かな?」レザックはゆっくりと訊いた。


「えっ?お前…引き取りたいのか…?」ラルフは信じられないという風に訊いた。

「ああ…だって、彼を施設に預けたくはないんだ。ラルフだってそうだろう?」

レザックは当然、というように言った。

「確かにそうだけど……、まぁ、いいんじゃねぇか!金は確かに少々

足りないけど…、市から援助も来るだろうから。学校くらいは大丈夫だろう。

まぁ彼にはあまり贅沢はさせることができないが……、勿論おまえもな。

でも、エリック君本人と、叔母さんの承諾がでれば大丈夫さ。

叔母さんなら多分大丈夫だろう、逆に喜んでくれるさ。」

ラルフは希望に満ちた顔で言った。

「エリック君の承諾は…、取れるかな…。」レザックは心配そうに言った。

「大丈夫だろう、お前等仲良くなったんじゃねぇか、公園のコトで。

それにお前と一緒でどんなに最悪でも、施設よりはマシってもんさ。」

ラルフはお前と一緒で最悪、という余計な一言を加えて言った。

「そうだな…、よしっ…! あ…、でも、ストゥービング警部は了解してくれるかな…。」

レザックはまたも心配そうな顔になった。

「本当に心配性だな……。大丈夫だよ、本人と叔母とお前と市が承諾していれば

ストゥービング警部なんていらねぇよ。」

ラルフはニカッと笑った。

綺麗な笑顔だ、と一瞬レザックは見惚れ、すぐにラルフと二人で

市役所へと向かった。


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