第一部:第二十章「復讐の誓い」
第一部【The an oath avenge】
★第二十章「復讐の誓い」★
昼。何時かはわからない。アノ朝の公園からは、
レザックのずっと付き添ってもらいながら帰ってきた。
エリックはベッドから起き上がってすぐは、ずっと放心状態に
なっていた。父が放火をしたのだ、と完全にわかったからだ。
エリックはレザックとの別れ際に、母さんは生きているの、とレザックに
訊いた。レザックは、ずっと黙っていた。顔を伏せ──。
その態度で、エリックは母さんは死んだのだ、とすぐにわかった。
沈黙が答えになったのだ。
また、父が行方不明だということも知らされた。
家族も家もなくなってしまったエリックは…、放心状態でいるしかなかった。
これからどうすればいいかわからない。
放心状態のはずのエリックに、自分自身が残酷な疑問を投げかけてくる。
【父さんは、家族を殺してまで何を望んでいたのだろう──。】
アノ藍色の布表紙の本は、まだベッドの近くに投げっぱなしになっている。
もう、生きる希望がない──。
これからどうやって生きればいい?
なんで自分がこんな事になる?
実の父に裏切られ、母は殺され、たった独りの生き残りの僕が、
一体これからどうやって生きていけばいいんだ?
【死ぬしかないのか…?】
僕はひょっとして、この世に居てはならない者だったのだろうか。
だから神様はこんな残酷な罪を与えたのだろうか。
エリックは涙を流したくても流せなかった。こんなに苦しいのに、何故か
涙がでないのだ。
今、笑うのと泣くのどっちが楽か訊かれたら、絶対笑うだろう。
レザックさんがほしい──。来てほしい。僕をコノ病院に残してほしくない。
僕の苦しみがわかるのはレザックさんだけだ。
ずっと放心状態。
ずっと
ずっと
そんなエリックに 神は もう一つ 辛い疑問を ブツケタ。
【誰が悪い?】
エリックはソノ疑問の答えを探した。
答えはすぐにでた。何度考えても同じ答え。
【父さん。】
そう、父さんだ。僕は悪くない。
何故僕はずっと放心状態だったんだ?僕は悪くないのに、
全てはアイツのせいなのに…。
アイツは母さんを殺したんだ…、僕を裏切ったんだ。
僕から全てをとったのだ。
アノ本には、自分の全てをすてる、と書いていた。そして、
たった一つの願望を叶えられる、と──。
【じゃあ何故僕まで全てを捨てさらわれなければならなかったんだ?】
全てアイツのせいだ。
アイツが僕から奪ったんだ。母さんを。家を。そして、父を──。
【──殺してやる──】
復讐は悪くないんだ。 自分のためにやるのではない、
母さんの仇打ちだ。
エリックはそっと碇を握った。前まであった悲しみは消えている。
そして小さな碇には、もう一つの感情がある。
【─怒り、だ─。】
エリックはもっと強く、これ以上にないくらい強く、碇を握った。
【アイツに、復讐をしてやる──。】
アイツは僕と母さんの命を奪ったんだ。
アイツを僕は殺してやる。アイツから全てを奪ってやる。
まだモウ一つ、アイツは奪われていないのがあるはずだ。
【──肉体──】
アイツから肉体をも奪ってやる。アイツがやったのと同じ方法で。
エリックはベッドの近くに落ちている藍色の本をみつめ、更に
強く碇を握った。
【──アイツが死に、この世から消え去るまで、
僕は死なない。主よ、僕はアイツに一生の復讐を誓う──。】
エリックは碇を右手で握りながら、左手で十字を切った。
最初は額、次に胸、次に右肩、最後に左肩──。
エリックは一生、コノ復讐を忘れない。 一生──。
いよいよ第一部始まりです。
長かったような短かったようなw
これからも長い付き合いになりますが
ご協力くださいw