第十九章「涙と共感」
※プロローグ最終章です。
★第十九章「涙と共感」★
ば、か、だ…。あんな事言うんじゃなかった…。
エリックはついさっき発言した言葉を後悔した。
父さんが放火犯なんて…、思っただけでも胸が締め付けられ
そうなのに…。
言葉に発したら──…、想像以上につらいって事、
知らなかったのか…?
僕は…
なんで…、あんな事言ったんだろう。
黙っていれば良かったのに…。
僕って実は物凄い馬鹿なんだな…、
ホラ─、レザックさんも驚いてるじゃないか──。
レザックは考え事をしていたため、
空耳が聞こえたのかと思った。
きっとそうだ…、そうに違いない。
もしかしてって思ったけど、まさかエリック君が
もう、ソノ事に勘付いているなんて…、まさか──。
「アノ…、本を読んだ…、の、かい…?」レザックは震えながら
訊いた。何故かわからないが、自分が激しく怒っているのに
気づく。
「……はい。」エリックは数十秒後、素直に答えた。
前と違って、ソノ声には冷たさがなかった──。
「じゃあ…君は…、嘘をついたのかい?読んでいないって…、
僕、に…。」レザックは途切れ途切れに言った。
顔が強張る。
ハハハ…、父親が自分の家に放火なんて…。
聞けば可笑しい話だ…。コノ人もなんで
こんなに顔が固まっているんだ?
面白くて仕方がない。笑えよ、面白いじゃないか─。
今度、アランとケヴィンとの話のネタにでもするか。
可笑しくて仕方がない。
デモ、ジブンノメニ、ナミダガタマッテイルノハ、ナゼダロウ──。
エリックは涙は絶対に見せたくなかった。
父さん…、に、教わったじゃないか──、
ヒトの前でやたらと感情を見せるな、と──。
エリックはすぐに碇の首飾りを強く握った。
寂しさ、辛さ、悲しみ──。色々な感情が混ざっている…。
涙をためている胸の苦しさに─、必死に耐える。
ジャナイト、ココロガカラダカラハナレルカラ──。
レザックは身体が何処も動かなくなった気がした。
自分の体が自分のではないような──。
ラルフ……、来てくれよ…。
心が、掛替えのない友に助けを求めている──。
何故だろう…、自分にはコノ哀しみに…、
耐えられない……。
何故だろう─。会ったばかりのただの子供に、
何故自分は、彼と共感しているのだろう──。
心が壊れる…。エリックは無性に逃げ出したくなった。ソトへ。
此処じゃない、本物のソトへ──。
「レ、ザっ…、ッくさん…、ソト…、ソトへでたっい…。」
エリックはしゃくりながら言った。
レザックはソトへでたい、と言っているコノ少年を見詰めた。
「ソト、でたっい…、ソトへ…でたいっよぉっ…。ソトへ
連れって…、くれる、ってっ、言った、じゃっん…。」
エリックはしゃくりながらソトへでたい、ソトへでたいと
まるで壊れたロボットの様に言った。
レザックは涙が頬に伝うのがわかった。
ずっとソトへ出たがっている哀れな少年──。
僕が彼にしてあげられるコトは──。
「ソトっ、、でった…、いっ…。ソット…でっ…」
「…わかった…、外へ連れて行くよ。」レザックはゆっくりと呟いた。
エリックは
顔が暖かい布に覆いかぶさるのに気づいた。
エリックは涙が一気に流れてくるのがわかった。
レザックの胸に、涙はどんどん溜められていた。
レザックはずっとエリックを抱きしめた。小さな、神に家族を奪われた
少年を──。
碇を握りしめるコトでしか
哀しみと寂しさを耐えられなかった十五歳の少年は、
初めて他のモノで哀しさを忘れられることに気づいた。
ヒトという、頭の悪い非力な人間が…、
もう一人のヒトという、弱く、出来損ないの
人間に助けることができるコトに、エリックとレザックは
初めて気づいた──。
ヒトは、一人だけでは無力だけど…、
もうヒトリの人間が加われば、
もっと無力で、馬鹿な人間になるのだ……。
ANCHOR プロローグ【THE avenge for mile】終
やっとプロローグが終わりました!
長かった…wで、第二十章からは、
第一部【The an oath avenge】です。
どうぞ長いお付き合いをw