第十八章「切り出せない言葉」
★第十八章「切り出せない言葉」
「……いいえ。」エリックは短く、感情をこめずに
そう、嘘をついた。
「三日前の深夜、君の家が家事になった。
僕たち警察はまだソノ事を君に伝えていなかった。」
レザックははっきりとそう言ったものの、
顔はずっと下を向いている。「本当に残念な事で、君の家は
跡形もなく焼けてしまっている…。」レザックは辛そうに言った。
エリックはなんと言っていいのかわからず、「そうですか…。」
と一言言った。まるで他人事みたいに。
レザックはその冷たい口調に驚いたが、すぐに顔を伏せ、
話を続けた。「実は…、とてもつらいことだと思うけど、
コノ火事は、ただの誤りではなく、放火の可能性があるんだ…。」
レザックは唇の渇きを満たす為、舌で唇を一舐めした。
「そうですか。」今度もエリックは、他人事のような口調で言った。
自分でも驚く程の冷たい声で、それも前よりハッキリと。
普通なら自分の家が放火されたというのに、こんな冷たい他人事の
ように言うのはおかしい、と疑うが、レザックはそれどろこではなく、
両手を握って話を続けた。「ソノ放火犯は間違ってやってしまったのかも
しれない…。酔った勢いで誤って火を付けた可能性もある…。だが…。」
レザックはゆっくりと話した。ダメだ…、コレ以上は話せない。
しかし、そんなレザックとは裏腹に、エリックは苛々してきた。
本当にしっかりしていないな、コノ人。ハッキリと言っちゃえば
いいのに…。
こんなことなら、ストゥービング警部に来てもらったほうがマシだったかも。
アノ人ならきっと、君の家を放火したのは、どうやら君の父親、
デイヴィット=マックガフィンという可能性がある、と。
エリックは何気なく思っただけだが、実際にデイヴィットが放火したのだ、と
思うと、胸がしめつけられそうになった。──碇の首飾りがほしい…。
レザックはそれからもずっと言葉を切り出さなかった。
ただ、エリックに残念だった、とか放火犯誰だろうね、なんて
馬鹿らしいコトを言っているだけだった。
そんなレザックにエリックは業を煮やし、「あの、ストゥービング
警部さんが没収した、僕のアノ碇型の首飾りありますか?」と、訊いた。
レザックはすぐに我に返り、ジャンパーのポケットからすぐに碇の首飾りをだし、
エリックの手に握らせた。
今日、ストゥービング警部に返してきなさい、と
言われ、すぐ返すつもりだったが、どうやって放火のコトを伝えようか
悩んでいて、ずっと忘れていたのだ。
「ありがとうございます。」エリックは碇の首飾りをつけながら礼を言った。
「えっ何が?」レザックはドキッとした口調で言った。
自分が無意識に火事のコトを話してしまったのでは、と思ったのだ。
「首飾りを返してくれて…。」エリックは呆れながら言った。
レザックは短く「ああ…。」と答えたきり、また黙りこくってしまった。
十分後──。エリックは、コノ空気に我慢できなくなって、
とうとう恐ろしい言葉を口にした…。
「あの、もしかして、
僕の家に火をつけた放火犯は、僕の父ですか…?」
一日に二話投稿です。
アメのちクモリと同じです…w
感想・評価ヨロ(*- -)(*_ _)シクですw