第十七章「朝の公園」
★第十七章「朝の公園」★
「ごめ…んね、待たせて、寒かった、よね…?」走ってきて息が
切れているレザックが途切れ途切れに言った。
「いいえ…。」エリックは何か言わないといけない、と思い、
短くそう答えた。実際寒かったが、はい、とも言えずにいいえ、と
答えたのだ。「ごめん、ちょっと待っててくれないかな、息が…、
整うまで…。」レザックはゆっくりと言い、膝に手を付き、息をゆっくりと
吸った。エリックはそんなレザックの様子を観察した。
この人がラルフか──。茶髪に二重の瞼、髪と同色の茶色の瞳…。
なるほど確かに見覚えはある。昨日、ストゥービングという警部が、
エリックにアノ悪魔の様な藍色の布表紙の本を置いてく事を、
必死に拒み続けていた若者。本を置いていくことを拒んだ、ということは
エリックに本を読ませたくなかった、つまり父が放火をしたのだと悟らせたくな
かった、という事だ。イコール良い人、かもしれない。
それでもやはりエリックは自分の散歩に誰かが付いてくる、という事が
気に食わなかった。
「ごめん、もういいよ、えーと、何処行こうか…?」レザックは顔を上げて
エリックに訊いた。「えーと、ラルフさん、僕此処がどこかわかりませんし、
どんな所があるかも知りませんので…。」エリックはコノ人、喋るたびに
謝るな、と思いながらも遠慮がちに言った。
するとレザックは顔を赤くし、手で髪を撫でた。「ああ、ごめんね、
えーと、此処はロンドン市立病院で…、うーん此処の近くには…、あっ!
僕の名前はラルフじゃなくて、レザック=アージェンだよ。あー、ラルフ=
ジョースキーの同僚で、彼が…えーと、急用で来れなくなったから代わりに
来たんだよ、よろしくね。」レザックはそう言ってエリックに手を差し出した。
エリックは怪訝に思いながらも自分の顔の前にある手を握った。
「此方こそ宜しくお願いします、アージェンさん。ええと、
御存知だと思いますが、エリック=マックガフィンです。
この度はご迷惑をお掛けしまして…。」取り敢えず丁寧に返事を返す。
レザックは今時の少年にない丁寧さに驚き、ご迷惑をお掛けしまして、
という部分に苦笑し、エリックが立っているところの後ろを指し、言った。
「えーと、取り敢えず近くの公園へ行こうか。朝だし、あまり人が居ないと
思うから…。」 「はい。」エリックはそう短く答え、公園へ向かった。
ソノ公園は結構広く、犬を散歩させている老人と、分厚い本を読んでいる
青年が居るだけだった。
「取り敢えずあそこのベンチに腰を掛けようか。」レザックは公園に着くとすぐに
真ん中の噴水の近くの茶色の木製のベンチを指差した。
エリックは素直に従い、ベンチに腰を掛け、暫く広い公園を見渡した。
すぐ前には綺麗に水を放っている噴水。エリック達が座っている
ベンチの斜め後ろには、冬のせいか、枯れている木が数本。
コノベンチの斜め右のベンチの下には、誰が置いていったのか、バスケットボールが
置いてある。ソノベンチの前には高めのバスケットゴール。
「何か食べるかい?朝は何も食べていないと訊いたけど…。」エリックが一通り
眺め終わると、レザックが横から声を掛けてきた。「いえ、何も食べたくありませんので…。」
エリックは膝の上で、左腕の関節を右手で支える様に握りながら言った。
遠慮ではなく、事実何も胃に入れたくなかった。「そうか…、なら暫く
此処に座っているかい?」レザックは優しく訊いた。「はい、すみません…。」
エリックは下の乾いた土を見詰めながら小さい声で謝った。
その十分後、レザックは重く口を開いた。
「そろそろ、話をしなきゃならない…、あー、君の家に起きた、
家事の事で。
エリック君、君は─、ストゥービング警部が置いていった、
アノ藍色の布表紙の本を読んだかな…?」
エリックは左腕を右手でさらに強く握った──。
更新です(●´∀`(●´∀`)
いよいよエリックとレザックのまともな?
会話(というより説明w)が始まりますw
感想、評価ヨロシクですw