第十四章「寒い朝の目覚め」
レザックの章が二話続き、エリックが出てこなかったので、エリックが出ていたころの第十一章の話をします。 ★第十一章粗筋★
父デイヴィットが持っていた藍色の布表紙の本を読んだエリック。ソコには、所謂、「たった一つの願望を
叶えるには、全てのものを捨てる」と書かれていました。エリックはソノ本を読み、父デヴィットが放火したのでは、という考えが浮かびました…。
★第十四章「寒い朝の目覚め」★
クシュン!エリックは自分のくしゃみの音と、この寒さに目が覚めた。
起き上がるとベッドの掛け布団が下に落ちている。なんという寝相の悪さ、
というわけではなく、気味の悪い悪夢をみたからだ。印象の強い夢だったのに、
それがどんな夢なのか全く覚えていないのだ。覚えているのはただ一つ、
夕方の暗い薄気味の悪い建物の一室、だということだ。それと…、
クシュン!エリックは二度目のくしゃみが出た。冬のイギリスはかなり寒いものだ。
エリックは床に落ちている布団を拾って自分の身体に掛けた。15歳のエリック
にとってその掛け布団は小さめだったが、この際文句も言ってられない。
エリックはそのままベッドに横たわった。前寝ていた位置からかなりずれているものの、
動いて元の場所に戻るなんて寒くてできない。既にエリックの細めの腕には鳥肌が幾つも
たっていた。エリックはそのままずっと固まっていたら、だんだんと自分の体温がベッドへ
移り、前よりは寒さも退いてきた。時期にやっとベッドから起き上がれるようになり、
することもないので、ずれていたシーツを元の状態に戻すことにした。五分かけて
シーツを直し終わったとき、やっと落ち着いてベッドの上に座ると、吐き気は治まってきたが、
肩が異常に凝っていることに気づいた。今まで寒さの事ばかり考えていたので、自分では
気づかなかったのだろう。エリックは首をまわして痛みを和らげることにした。
首をまわすとコリコリといい音がする。それから、首を自分の手で優しくマッサージした。
マッサージし、肩のコリが大分良くなったとき、ベッド前のスライド式の窓に眼をやった。
開け放したカーテンから大量の日差しが降り注いでいるということは、朝か昼かの
どちらかだ。エリックは夜でないことがわかると少し安心してきた。さっきみた
あの悪夢はなんといっても夕方の景色だったのだ。なので夜や夕方ではなく、朝や昼のほうが
良い。エリックは外の陽をみていると、急に外へ出たくなってきた。
外へでたい、と思ったのはエリックにとっては珍しいことだった。
内気なエリックは外で皆と遊ぶより、家で本などを読んでいるほうが好ましいことなのだ。
それに、外は怖いモノが多い。今は大分良くなったが、小さいころ、──?まただ。
忘れているというより、その記憶がない。これ以上が続かないのだ。
今僕が思ったのは一体なんだったんだ…?前五人組の男がコノ
白い部屋に入ってきたときも、言おうとしたことを思い出せなかった。
何故か、ソノ時言おうとしたことと、今考えたことが同じ気がする。いや、多分同じ
なのだろう。じゃあ何を言おうとしたんだ…?エリックはソレを考えると
胸がむかむかし、考えたくなくなってきたので、またベッドに横たわることにした。
掛け布団をあげ、なかに潜り込もうとした時、ベッドサイドの上に一冊の本が置いて
あるのに気づいた。藍色の布表紙の本──。アノ本だ…。寝ていたので忘れてしまった
ので考えていなかったが、やはり現実のコトだったのか。やはり父さんが──。
エリックはソノ本をみると胸のむかむかが激しくなり、ソノ本を無意識にベッドの
後ろに激しく投げた。ソノ本は、哀れに床に開かれたまま落ちてしまった。
エリックはもう一度窓のほうを見て、ゆっくりとベッドから起き上がって、コノ部屋をでるため、
ドアへと向かった。ドアへ向かったとき、アノ本が、十字架が大量に描かれている頁を、
見せしめのように開かれているのをエリックはチラリとみた。しかしソノ本の方へは
向かわず、真っ直ぐとドアへ向かい、白色のドアをゆっくりと開け、白い部屋の外へ
でた。 そこには鉄製の白い廊下が前へと続いていた。ソノ廊下を少し進んだとき、
またしても白い扉から看護師と思しき白い服の着たショートヘアの若い女の人が出てきた。
エリックはソノ女の人のところまで行き、ゆっくりと言った。
「あの、ココの外へ出たいんですけど。」
やっとエリックが登場です。
次は第十二話、十三話と同じく、レザックが
主にでてくる章ですが是非読んで下さい。