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第十二章「警察署での喧嘩」

★第十二章「警察署での喧嘩」★

レザックは一人、夕方の警察署を歩いていた。

正確に言えば、周りには数人の同僚警官がいるのだが、

彼は別のことを考えていたため、目に見えていない。

別のこと、とはエリックのことだ。昼間あった時から彼のことが忘れられないのだ。

もう、アノ本を読んだのだろうか…。レザックの脳裏によぎるのは何時もその言葉だった。

それだけが気になって仕方がない。やはり、あの時、ストゥービング警部の反対を

押し切って本を取り上げるべきだった。そう後悔したと同時に、彼の顔に自嘲的な表情

が浮かんだ。反対を押し切って取り上げる?僕にそんな勇気があるものか。

気が弱いんだから。仮に今、またあの時に戻ったとしても絶対に反対できるものか。

「レザック!」突然の呼び声と肩を叩かれた衝撃に思わずレザックは廊下に仰向けに倒れてしまった。

今まで上の空だったレザックの頭は混乱状態で此処が警察署だということも忘れ、拳銃を

取り出した。素早く(と言うよりは慌てて)出した拳銃をソノ者に向ける。

「落ち着けよ馬鹿、俺だよ!」男は顔をサラッとした黒髪を上げた。「ラルフ…、脅かすなよ」

レザックはフラフラと身体を起こした。少しの時間だったのに、汗がびっしょりと掻いている。

「驚いたのは俺だよ、頭狂ったんじゃないのか?拳銃なんて…、此処を何処だと思ってるんだよ?」

ラルフはレザックの構えたままの拳銃を顎でさした。怒っているような口調だが顔がにやにやしている。

レザックは途端に恥かしくなり、周囲を見渡した。皆こっちを面白そうに見て笑っている。

馬鹿だ…。何やってるんだ、警察官が肩を叩かれただけで床に哀れに倒れ、その上警察署で

同僚に拳銃を向ける始末だ。自分にとことん呆れてくる。

 「最高だったぜ、今の慌てぶり。ストゥービング警部が見てればどんなに愉快か。俺じゃなくて

警部が良かったな。」ラルフは尚もにやにや笑いながらレザックの拳銃を持ち、彼の拳銃入皮に

拳銃を突っ込んだ。「警部に言うなよ。」レザックは恥かしくて顔を下げて

拳銃をちゃんとしまうふりをしながら小さい声でそれだけ言った。

「いや、もう遅いかもな。」ラルフは顔から笑みが消え、レザックの後ろを指した。

警部か!?レザックはゆっくりと恐る恐る後ろを見た。

警部ではなかった。アストアス、だ。濃い緑色の眼をした余裕のある顔の男。

アストアスはレザックと眼が合うと、嘲笑うような顔をした。実際鼻で笑っている。

アウト──!昔々、小学生のとき人数が足りなくてでた野球の地区試合を思い出した。

あの時は滑り込みセーフだと自分では思っていたが、実は足が遅く、完璧アウトだった。

あの時は確かおまえが野球をやるなんて、と興奮し、会社を休んでまで来た父と、

優勝した時のため、と化粧を濃くしていた母の二人が来てくれたっけ…。なんて事を言ってる場合

じゃない。アストアスが来た、という事は警部にバレる。なんたってアイツは最低最悪の同僚だ。

ふとアストアスを見たとき、アストアスだけじゃなく、もう一人の男が彼と話しているのが見えた。

いや、話しているんじゃなくて、掴み掛かっているような…。

見覚えがあるな…誰だろう?レザックは色々な出来事のおかげでよく回転していない頭で

彼らのことを観ている事に決めた。……!ラルフだ!レザックの頭は回転が早くなってきた。

「ラルフ、やめろ!」レザックは喧嘩している彼等の元へ駆け寄った。

何回も言っているが此処は警察署だ。同僚同士の喧嘩なんて、それこそストゥービング警部に

知れられたらお仕舞いだ。レザックは彼等の所へ行く間際、周りの警官をみた。

皆観て見ぬふりをして通り過ぎていく。薄情な奴等だな…。レザックはふとそう思ったが、

コレは仕方のないことだ。もし止めにでも入ったとしたら周りに喧嘩に参加しているなどと

思われ、警部に密告されるだけだ。レザックはやっと彼等の所に追いついた。

随分の距離だ。なにしろ廊下が長い。

「お前、今レザックを笑ったよな…。」ラルフはまだアストアスの首元をつかんでいる。

アストアスが今度はラルフを嘲笑った時、ラルフが拳を彼の顔の前まで持っていった。

今にも殴りそうだ。「私だけじゃない、他の者も笑っていた。第一君も笑っていただろう?」

アストアスは流石に怯えたのか、口元から笑いが消えた。「他の奴等や俺はお前みたいな

嘲笑的な笑いはしなかった。」ラルフは首元をさらに強く引っ張り、少し上に上げた。

アストアスは何も応えなかった。「…よし、レザックの事を、それと勿論コノ事は誰にも言わない

と誓うのなら許してやるよ。」ラルフは冷静を取り戻し、言った。「誰にもって、ストゥービング警部

の事だろ?さぁどうかな…。まぁ警察署で喧嘩を起こすとなったら君の処罰もあるだろうからね…。

警部は君達の事を良く思っていないみたいだし。」アストアスはゆっくりと発音した。

君の事を良く思っていない、ではなく、君達の事を良く思っていない、と。

ラルフはまた掴み掛かった。手をすぐにアストアスの顔の前に出し、殴りかかる寸前だ。

「やめろ、ラルフ!彼の言ったとおりだ、喧嘩なんて起こしたら処罰が酷くなる。

殴ってしまえばお仕舞いだぞ!…、彼の言ったとおり僕らは警部に嫌われている。」

レザックはラルフの手を押さえながら言った。ラルフはレザックの言葉に同感したのか、

アストアスの首を乱暴に離した。「今回は特別に見逃してやるが、レザックの言葉がなったら

俺はお前をぶん殴ってたぞ。」ラルフは冷静にアストアスをみて言った。

「ふん、警部が怖いか…、今回は、じゃなく一生殴れないさ。警察官をやめれば

別だが。」アストアスはしわのできた首元を直しながら言った。

「アストアス、今度は警察署外で会ってゆっくりと話でもしようじゃないか。」

レザックはまたもや殴りかかろうとしたラルフを抑えながら言った。

三人の負け惜しみの言葉が、アストアスはラルフの言葉、ラルフはレザックの言葉が、

そしてレザックはアストアスの言葉がそれぞれの頭の中で木霊した。

期末テストが終わったので更新です。

これからも続けるのでよろしくお願いします。

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