第十一章「火事の謎、そして答え」
★第十一章「火事の謎、そして答え」★
エリックが眼を覚ましたとき、体中に物凄い量の汗を掻いていた。青いパーカーが
ぐっしょり濡れている。…嫌な夢を見たものだ。エリックはすぐに忘れようとした。
机の上に置かれている水差に手を伸ばし、透明の無柄のコップに水を注ぎ、
一気飲みをした。一気に飲んだせいか、身体が一瞬冷えたが、汗はとれなかった。
エリックはまた寝るのが怖くて、そのままベッドに座っていた。暫くしてから、
コップを戻し、またベッドに座ろうとしたとき、アノ藍色の布表紙の本に、手が触れた。
エリックは一瞬ビクッとした。本を手にとってみる。やはり何処も焼かれた後はない。
デイヴィットが持っていた状態と同じだ。彼はゆっくりと頁を捲った。
【死すも訪れしとき、全ての信頼をを失った男は一つの蔵書を手にす。】
その本の第一頁には、そう書かれてあった。短い文だったが、すぐに覚えられる
ような独特の文字で書かれてあった。それも手書きで。布表紙に手書きか…、
一体いつにできたんだ?エリックは疑問が浮かんだがそのままつぎの頁に眼をやった。
【彼が彼の地に現れし時からその運命は果てし決死され、彼はその運命を
呪う。彼を他とりし時、彼は絶望に被いやれ、死を待機する。彼を身とりし時、
汝が絶望に被いやれ、意思の行方を遮られ、死を待機する。
我に汝の願を報堵する時、汝は全てを手放し、壱つを得る。然し、
失敗に終し時、汝は全てを失い、壱つを消し去る。尚、その行為を選べし
時、彼は丈夫の体を得、無償を得る。汝が望むあらし、汝は項の葉を取りし、
そして汝の死守すべきものを、彼に渡堵する。これ等の行為をふまえし時、
汝の全てのものを焼き払い、または殺落する。
この行為を終し時は、彼のことを忘却せず、何時も汝の頭に焼きつくこと。】
その本はそれで終わっていた。実際はもっと頁数が多かったが、残りは十字架と、
主、イエス=キリストが描かれているだけで、文はそこで終わっていた。
エリックはもう一度読み返した。普通の少年なら、なんのことかわからず、
すぐに本を投げ出し寝るであろう。しかし、エリックは違った。忍耐力があり、
更に身体に力がない代わり(自分で言うのは悔しいが)、頭にたくさんあるのだ。
彼がまず眼につけた言葉。それは、【我に願を報堵する時、汝は全てのものを手放し、
壱つを得る。】という文と、【汝の全てのものを焼き払い、】だ。
デイヴィットはこの本をずっと読んでいた。全てのものを焼き払う…、
火事…。デイヴィットの全てのものは──、家族、仕事、財産。仕事をなくすのはごく簡単で、
やめればいいことだ。家族と財産は…、家族は殺せばいい、財産は捨てればいい。
その二つを同時に、しかも手っ取り早くできる手段は…、ヤキハラウ。
ヒヲオコセバイイダケダ。エリックの脳裏に、答えが浮かんだ。
とても簡単で、そしてとても残酷な答えが──。嘘だ…!そんなわけがない。
でもデイヴィットの最近の態度は…。いや、馬鹿かお前は。父さんがそんな事を
するわけがないだろう?そんな行為ありえない。考えてみろよ、父さんはきっと
今僕と同じこの病院に入院してるんだ。僕の病室にこれないのは、僕より危ない
状態であるから、ただそれだけだ。
僕は火事のショックで被害妄想をしているだけなんだ。
エリックは自分に言い聞かせた。でも…、
じゃあ、あの警察の態度はなんだ…。まるでエリックが考えていることが
事実のように、レザックという男は、本を置いていくのを必死にとめていた。
警察は、デイヴィットが生きてこの病院にいるかどうかはわかっているはずだ。
もしこの病院に父がいるのなら、そんな馬鹿なこと考えなかっただろう。…しかし、
それを真に受けるということは、父さんは──、それに、父さんは火事が起きた
日の夜、僕の部屋に来て…、涙を流した。暖かい大粒の涙…。
いつもの冷静で無表情なデイヴィットからは考えられないような…。
ま─、さ─、か……。ホウカハンハトウサン。
エリックの脳裏にまた簡単で、残酷な答えが浮かんだ──。
これが、エリックの人生を多いに捻じ曲げた地獄の始まりだった。
いや、もしかしたら始まってさえいなかったのかもしれない──。
やっとここまで書き上げた…。
(前回も言いましたがw)
これからはスムーズ(?)に頑張ります。
物凄く長くなってしまったらすみません…。