第十章「火事の疑問」
第十章「火事の疑問」
エリックは呆然と彼らが出て行くのを見守った。当分ドアから
眼が離せなった。一体なんだったんだ?警部ってことは…、警察ということだ。
エリックは頭を整理するために、次々と自分自身に質問をした。
何故警察がココに来たのか。ソレは火事が起きたから。
僕の家に…。ソレは認めなくてはならない事実だ。
次に此処は何処か。此処は病院。そして、最大の謎。何故両親が来ないか?
答えるのが怖い…。普通なら親が息子の様子を看に来るものだ。でも一向に
現れない。ソノ理由は──。エリックはすぐにその疑問と、そしてソノ最も適切で
ある答えを振りほどいた。そんな事はない、絶対に。エリックは頭をふると、不意に
目線がストゥービング警部が置いていった本に移った。藍色の布表紙の本…。
何処かでみたことがあるような…。エリックは暫くソノ本をみつめていた。
??布表紙…、火事が起こる前、父さんが…、読んでいた本だ!エリックは絶句した。
全く、ソノ本は燃えていなかったのだ。何故…あんな火事が起きたのに。
いや、きっとコノ本は父さんによって何処かに厳重に保管されていたのだろう…。
金属の何かに…。エリックはすぐにソノ疑問を振り払った。両親が来ないのは何故か
という疑問が浮かんだときと同じく。しかしソレと同時に二つの事を思い出した。
じゃあ僕の身体には何故火傷の後がない?僕が持っていた本は
何故燃えなかった?エリックは寒気がしてきた。父さんの本が何故燃えなかったかは、
厳重に保管をしていたのだ、と納得できる(あくまで自己納得だが)。しかし、自分
のコトは無理だ。自分は何故火傷を負っていないんだ?確か、僕が意識があったときは、
火は自分のすぐ目の前まできていたはずだ。エリックは繊細に火事の記憶を思い出すこと
ができた。あんなに目の前まできたのに、火傷をしていないなんて…直接火が触れていないにしても、
熱気で火傷くらいは負うはずだ。いや、第一、直接火が触れないのがおかしい。
ベッドが燃えていたのに、何故本が、そして身体が焼かれない?
あの火が僕の前までくるのには、時間がかかった。異常に…。
しかし、もし掛かったとしても、碇は鉄製だからわかるが、本は…。
いや、きっと自分の勘違いだ。火が自分の前までくる前に、
きっと助けがきたのだ。きっと…、エリックはまたもや疑問を振り払った。
今は何も考えたくない。ただでさえ色々なことが起きて精神が参っていると言うのに…。
エリックはコレ以上何も考えないため、そして自分の新たな疑問から逃れるために、
もう一度ベッドに横になって少し眠りことにした。
此処は何処だ…?エリックは暗闇の中で呟いた。エリックが眼を開いた場所は、
只々真っ暗闇だった。誰もいない。急に気分が悪くなった。気持ち悪い…、吐き気が
催して来た。エリックは急いで公園の公衆便所に駆け寄った。一つの個室のトイレに
体中のものを吐き出す。しかし、本来でる食べ物がでず、水と汚物(食べ物でも
汚物なのだが)だけだった。彼はコレ以上でないことがわかると、まだスッキリは
しないが、公衆便所の手洗い場に行き、蛇口を捻り、口を濯いだ。?蛇口に血が
ついている。硬い、どす黒い血──。最初からついていたのだろうか?だが
血はこびりついてはいなく、つけられたばかりだった。嫌な予感がする…。
エリックはゆっくりと自分の手を顔の前にやった。眼を恐る恐る開く。
「ウワアアアアアアアアア!!!!」彼は声にならない悲鳴で絶叫した。
この世のものとは思えないような、冷たく、汚らわしい声で──。
やっと十章までこれました!
これからも何十章もいくと
思いますのでよろしくお願いします。