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一生うさぎ耳です(笑)。
「さあ、聖竜賢者よ!どう戦う?」
”どう戦う”じゃねえ!
ミルの口を使うんじゃない!
戦いのため、身構えたミルの身体から凄まじい力を感じる。
ダッシュで距離を詰めてきた!
ガード…?
ドン!
手のひらで突かれて思いっきり吹き飛ばされた。
ガードをしたつもりだったが間に合わなかった。
まさか!
「フフフ、手加減は今の一度きりだよ。」
また間合いを詰めてきた…今度はグーだ。
「【竜】【気】【凛】【凛】【体】【操】!!」
俺の最大の技だ!
身体能力がアップするうえに物理防御効果もある。
さらに相手のあらゆる魔法やスキルを無効にする。
ブルートをかっさらったのもこれ…まさに反則技だ。
だが…それでもかわすのがやっと!
あれを無効しきれてない!
「人の身で避わすか…さすが聖竜賢者よ!」
ミルに近づくと時間の流れがおかしくなる。
向こうは普通に動けるのに、こちらはゆっくりになる。
時を操る相手は本当に嫌だな!
「コッチからいくぞ!【解】【魔】【幕】×10!」
時間系統の魔力でも解除できる”解魔幕”を張って接近する。
こちらの”竜気凛々体操”もキャンセル状態になるが…どうだ!
回り込んで後ろから手をとって組み伏せようとするがかわされた!
振り向きざまにミルが引っ掻いてくるので、必死にかわす。
それでも時間的影響はない。
これなら単純に身体能力勝負か?
スピードはミルの方があるから、あえて攻撃を受けて…
どげしん!
側頭部に蹴りを食らった…。
いきおいに逆らわず転がって距離を取る。
…クラクラする。
「フフフ、どうしたのかな?押されているよ…君はこの子より弱いね。」
「…ミルは…初めて会ったその日から…強かったよ…ずっと…ずっと。」
どうやら相手の近くにいると影響が強くなるようだ…。
”解魔幕”が一気に相殺された。
となると、距離を取りつつ抑えるとなると…。
これしかないか?
一応、聖なる槍とやり取りして確認する。
腹に刺さっていた槍が俺の身体に吸い込まれる。
これ以上はミルが心配だ。
姫巫女とはいえ、神をその身に宿すのは負担が大きいハズ。
(あくまで、ミルが中心なのですね。)
(…感情のある話し方ができるようになったのかい?)
(ええ…それより…いいのですか?)
(死ぬほど辛いが…ミルには変えられない)
(…わかりました。やりましょう!)
聖なる槍…女神ルナと初めて言葉で会話した。
今まではイメージでのやり取りだったが。
俺は懐から少し大きめの布手を取り出して頭に巻く。
パンパンと頬を叩いて気合をいれた。
「いくぞ!」
「こい!」
フェイントをかけながら、こちらから近付いて…時間のおかしくなる間合いの直前で槍を身体から射出!
聖なる槍は相手を無傷で刺し封印出来る武器。
神の力を持った槍なら時間を止められても平気だろう!
が!ミルの身体を素通りして行った…。
幻術か!
がしっ!
後ろからミルが組み付いて絞め技をかけてきた。
「目の前で槍をしまって見せるなどバレバレではないか…終わりだ聖竜賢者よ。」
首を決められた!
数秒で意識が…飛ぶ…その…ま…え…に……
「うひょえふぇふぁひゃひっひっひーーーー!!!!!!」
ぽん!
ミルが転がり…そのミルから男が飛び出してきた!
「…そ…そんな…」
「お前はすでに負けていたんだ!ミルに取り付いた時点で!」
コレだけは…コレだけはしたくなかった。
しかし!
ミルのためなら…うさぎ耳にでもなんでもなってやるーーーー!!!
布で頭を隠したのは、ルナの神徒…姫巫女の男版は神徒という…になったコトを隠すため。
神徒になったことで”うさぎ耳”を得た俺は至近距離のミルの首筋を、ながーい耳でくすぐったのだ!
そう、ミルは首筋のくすぐり技にメッチャ弱い!
それを俺は知っていたのだ!
俺のかちだーーーーー!
…ううっ…鏡を見たくない。