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ミル1人だけで神殿の中に入るように、と俺達は神殿を管理する女性から言われた。
元々送ってきただけ。
すぐ帰るつもりなのだが…寂しいな。
「ミル…これ。」
ミルに真音竜の卵を渡す。
帰り用の竜だ。
クーが俺の心にある巣に卵を生むので、竜の真音が結構ある。
ミルはそれを受け取りながら、
「コータ…ミルなら大丈夫、って言ってくれる?あのときのように…。」
「ミルは大丈夫!いつでも俺はそう思っているからな。」
「うん!頑張るの!」
ミルは差し出した俺の手を両手でギュッと抱きしめて…。
クルリと振り返りしっかりとした足取りで歩き出した。
そのときチラリと見えた横顔は…。
神聖なる乙女…。
女神に愛でられた存在…。
猫耳の…姫巫女の顔をしていた。
姿が見えなくなるまで…門が閉まるまでミルを見送った。
…見つめていた。
ミルが見えなくなると、俺はクーの背中に乗った。
クーは空へと舞い上がる。
俺は首にかけたネックレスの宝石の一つに手を当てて、念をこめる。
これは俺が作った信号石。
守護石の理論を解析・応用して作った連絡用の魔法の道具だ。
すぐにクレアから伝話の魔法がかかってきた。
「俺だ…うん…始めよう!みんなに伝えてくれ。」
…ミルが帰って来るまでにひと仕事しておくか。