シェリーの願いごと
章にするために1つだけ先行して投稿しました。
以前に書いたとおり、2章は2月1日から投稿します。
今回は導入ですので2月1日からの話しと直接はリンクしてません。
今…。
私は幸せ…。
何もしなくてもよいから…。
戦うことも…。
奪うことも…。
憎むことも…。
悲しむことも…。
薬指にはめた指輪から力が吸い取られていく…。
恋人が送ってくれた指輪がそういうものであることはわかっていた…。
どうでもよかったのよ…。
あの日から…。
私は私ではなくなってしまったのだから…。
私は魔人の1部族…影族のプリンセスだった。
それ以外に価値のない、何の力もない少女だった…。
少女の私は憧れていた…。
年上の部族一の戦士…マーフィー…。
彼は他の誰よりも強く、賢く、そして残酷で…自由に生きていた。
彼に憧れ…恋をしていることも周りに伝えられない…。
そんなただの女の子だった私…。
あの日…。
魔王会議が間近に迫ったあの日に
あれは起こった…。
あの日、私の父は病気の祖父から一族を任され…魔王の力を譲り受けるはずだった。
しかし、譲られた直後に何者かに2人は襲われた。
不意を打たれた父は倒され…魔王の力は奪われてしまった…。
すぐにマーフィーはその者を追いかけていった…。
その間に魔王の力のない我ら一族に、今まで従えてきたもの達が反乱をおこした。
ついには大軍に砦を囲まれ、明日にも全滅するしかない…と…。
祖父は禁断の奥義を使うことにした…。
1人の影に残りの一族の者が影になって入り込む「影融合」…口伝によると魔王並みの実力を持つことが出来る影族最後の技…。
皆が飛び込んでいった…。
私の影に…。
誰もいなくなった…。
そして…。
気が付くと敵も見方も…。
誰もいない荒野の真ん中で…。
ポツンと立っていた…。
幼子のようになく私のところに…。
彼が戻って来た…。
私以外の唯一の生き残り…。
彼はは取り戻してきた魔王の力を私に渡してきた…。
あなたが持っていて…。
そう願う私の言葉に彼は首を横に振った…。
「魔王達は、魔王以上の力を持ったお前の存在を決して許さない…。
お前が生き残る方法はただ一つ…お前が魔王になるんだ。」
私は…生きる道を選んだ。
魔王会議ののち…。
「大魔王」の力を得た私は不要になった魔王の力を彼に渡した。
そのとき知った…。
気が付いた…気づいてしまった…。
彼は…マーフィーは…私を見ていない…。
私の影だけしか…。
一族を失い…”耳”も失った…。
全てを失った私に残されたのは、大魔王…魔人の救世主の肩書きだけ…。
私は影に…影になりたかったのよ…。