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黒歴史ノートが生んだラスボスは、加減というものを知らない  作者: 小宮めだか
そのラスボス。現実を変えさせて頂きます。

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李里奈の描いたもの

このエピソードは自分の中でとても好きな場面。

ゆっくりとお楽しみください。

(そういえば彩音の家に行くのは何か月ぶりだっけかな。昔はよく圭人と一緒に遊びに来ていたけど)


 女子の自宅に遊びに行くというのは、高校生男子からすればかなりの一大事だ。李里奈の漫画の絵コンテを見に行くってだけだから、深い意味はもちろん無い。全くと言っていいほどない。


「何をさっきから一人でブツブツと言っているんだい。逸平。ボクの魔法の力がとうとうキミの精神面にも影響を及ぼし始めたのかな? 」


「なんだそれ。体重以外にも影響が出るって言うのか? レイカ、そのルール聞いてないぞ」


 昨日も体重や筋力を意識して夕食は母親が驚くくらいに食べたし、筋トレも久しぶりに筋肉が悲鳴を上げるくらいまでやり切った。このところレイカのせいで全く出来ていなかったから、体がなかなか動かなくて苦労した。やはり継続は力なりだな。


「逸平君、本当に久しぶりね。彩音からいつも聞いているし、隣だから毎日会っている印象が抜けないんだけどねぇ」


 すごく美人な彩音の母親、才羅(さら)

 どちらかというと彩音よりも美人度は上だ。そんな才羅さんでもレイカの美少年ぶりには感嘆の声を上げていた。


「さくらさんから聞いていたけど、確かにこれは……そこら辺にいるようなアイドル以上ね! おばちゃんも推しになっちゃおうかな」 


 そんな話を才羅さんとしていたんかい、うちの母親は! レイカは美少年扱いが、さも当然と言った動作で豊かな微笑を浮かべ、指を口でなぞる。その妖しい雰囲気に俺すら一瞬ドキリとさせられる。


「逸平さん。やっと来てくれた! 待ってたんだよ」


 小キレイな淡いピンク色のパーカーを羽織った李里奈が出迎えてくれる。

 その後ろからひょこっと彩音が顔を出す。

 彩音は白いワンピース姿で、腰を黒いベルトのような物で軽く止めている。スラッとした体形が逆に強調されている。一瞬先日の夜の事件のことが頭を過り、俺は顔を赤らめる。


「おねぇちゃん朝から大変だったんだよ。今、あたし達の部屋には入れないくらい服が散らかって……」


「李里奈! それ以上は言わないで」


 ぴしゃりと李里奈の発言を姉の権力を行使して止める。仲の良い姉妹の会話に俺だけでなく、レイカでさえどこか楽し気な様子だ。


「これは良い匂いのする家だな。このスパイスの効いた香りはどこかで嗅いだことがあるような気がする」


 違ったか。

 楽し気な様子だったのはこのカレーライスの匂いに反応していたからか!


「ふふふ。さくらさんに聞いていた通りね! レイカ君はお魚が好きだっていうから、今日は南インド風フィッシュカレーにしたのよ。たくさん作ってあるからどんどん食べていってね」


 才羅さんがキラキラした瞳で笑いかけた。


 ✛ ✛ ✛ 


 食べ終わった俺は、さっそく李里奈の描いた絵コンテを見ながら、アイディア出しを手伝い始める。机に座った李里奈は、長い引き出しの中から使いこまれたノートを取り出すと、シャープペンシルを握りしめアイディアを書きつらねる。

 それを横目に彩音とレイカは洗い物を手伝っている。「ほう、これが洗剤というものか。リトアニアには無い種類のものだな」と呟いているのが聞こえた。


「へぇ……眼鏡という概念の無い世界線の話か。発想が独創的だな」


「うん。そこに転生した眼鏡屋さんが、遠視の子の目を眼鏡で見やすくしていくの」


 繊細なタッチで描かれた絵コンテ。中学性が書いたものにしては良く出来ている。俺は一瞬そのまばゆい才能の原石を前にして、頭を振るようにして自分を振り返る。

 俺の創作の強みとはなんだろう。


「それで有名になっていって、目に不自由を感じている人たちを救う話なんだ」


「なるほどな。李里奈、それだけだと山も谷も無い平坦な話になっちゃうから、例えばそうだな……その国のお姫様がド近眼で困っているとか、悪い魔女が実は目が悪いだけでそれを突き止めて治そうとするとか、展開に工夫をつけるのはどうだろう」


「そうか! さすが逸平さんだね。それでちょっと考えてみるね」


 そう言った李里奈の視線が、台所で彩音と一緒に洗い物をしているレイカに注がれた。好奇心いっぱいの瞳でしばらくその二人の様子をも見つめていた彼女は、おもむろにカバンからスケッチブックを取り出すと、何かをサラサラと描き始める。

 彩音の横で、洗剤の泡でシャボン玉を作って遊んでいるレイカが声を掛ける。


「ふむ。こういうゆったりとした展開も良いものだな。どうにもボクは落ち着いた生活をしていた印象が頭の中に無くてね」


「そうね。あたしはレイカさんの事初めはすごく怖かったけど、今はなんだか居ないと変な感じ……なんて言えばいいのかな。そうね、昔からの友達のような気がしているの」


 彩音の何気ない一言。

 パチンと弾けるシャボン玉。

 レイカの考え込むような、それでいて意外な言葉を聞いたとでも言う様な表情。


「あたしなんか変なこと言ったかな」


 恐るおそる聞き返す彩音。レイカは人差し指を唇の前にかざすと左右にゆっくりと振る。


「トモダチ……初めて言われた言葉だな。でもどこか心地良い響きを感じる」


 その時、李里奈が「描けた」と小さく、だがはっきりした声で告げる。


「何を書いていたんだい、李里奈」


「ふふふ。まだラフスケッチだから見せてあげないよ。完成したら逸平さんにも見せてあげるね」


 その時だった。ゴホゴホと苦しそうに口を押えて咳き込む様子を見せる李里奈!

 俺はびっくりして、力を入れないように注意しながらも背中を何度も叩いて声を掛ける。すぐに彩音が飛んでくる。手には吸入機が握られている。


 だんだんと呼吸が落ち着き、真っ青だった顔に赤みが戻った。

 俺と彩音、才羅さんの安堵の表情。

 ……だが、レイカだけは違った。


「……(めぐ)りの定め」


 ポツリと呟いた、誰にも聞こえないかったアイツの一言。

 それは異質の空気をはらみ、これから起こることを予感させるには充分な一言だった。


このエピソード。覚えておいてください。

大事なことなのでテストに出ます。

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