表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
scene_00X  作者: 細井真蔓
7/12

scene_007

   scene_007


 【場所】

 兵部バス湖東線熊比良行き車内


 【人物】

 柴空愛しばそあら・21歳・ガールズバー店員

 木下美音きのしたみおん・22歳・ガールズバー店員



「美音ってさー、あれ知ってる?」

「なに?」

「テッテレッテ〜テッテテ〜ってやつ」

「なにそれ、聞いたことない」

「ユーチューブの」

「え、動画?」

「カリオックス」

「カリ……あー、なんかある! 聞いたことある! あー、なんだっけ? 店長が言ってたやつ?」

「店長も見てるんだ。やば。まだ再生数ぜんぜんのユーチューバーってかグループだけど、めっちゃ面白いから見てみて」

「え、何系?」

「基本ネタ系。けっこうきわどいやつ。メインが女の子だから、男友達になんかさせる系がめっちゃ面白い」

「あー、ね」

「でさ、けっこう昔の動画で、いっしょに出てた子の彼氏に怪しいセミナー行かせるってのがあって」

「あー、ありがち。つまんなそう」

「実際それはクソつまんないんだけど、てかその彼女の子いま出てないし」

「クビでしょ。つまんないから」

「そうそう、でさ、そのメインの子が別アカで昔出してた動画があって、それで紹介してた『開運サーファー』っていうセミナーをわたしもいま登録してるんだけど」

「え、待って。情報量多くてついてけない」

「だから、カリオックスの子が別アカで出してた動画があって」

「別アカまで追ってんの? めっちゃハマってんじゃん」

「かわいいんだよね、その子が」

「へー」

「それで、その子が昔やってたっていうオンラインセミナーがあって」

「なんだっけ、その……サーファーなんとか?」

「開運サーファー」

「開運って、あの……運がよくなる的な?」

「そう。運気を乗りこなすの」

「乗りこなすんだ」

「それめっちゃいいから、美音にもオススメしたくて」

「いや、てかさ、クソつまんない女どこいった? なんでその話したの?」

「だからー、そのクソつまんない動画の関連で昔の別アカの動画が出てたんだって」

「あー、関連動画で」

「そう、セミナーつながりで」

「あー、はいはい。で、空愛がいまそのサーファーなんとかにハマってるっていう」

「ハマってるっていうか、開運サーファーがわたしにハマってきたっていうか」

「え……どう違うの?」

「向こうからハマってきたんだって。わたしに」

「え、意味わかんない」

「まあいいよ、それはいい。とにかく美音にもオススメなの」

「いや、あたしはいいよ。なんかそーゆーの信じてないし」

「開運? サーファー?」

「いや、セミナーだよ。サーファー信じてないってどういう状況だよ。まあ別にサーファーも信じてないけど」

「なんで信じてないの?」

「え……? だってセミナーとか怪しいじゃん。さっきの動画といっしょだよ。クソつまんない女のやつ。怪しいセミナーに潜り込んだとか言ってたじゃん」

「それはまた別のセミナーだから」

「わかってるし。でもどのセミナーも似たようなもんじゃないの? 詐欺とかよく聞くよ?」

「あー、あー、はいはい。そういうやつね。美音はあれだ。逃しちゃうタイプだ」

「え、何を?」

「運気を」

「いや……なんて言うか、うーん、あー……この話、もう終わりにしない?」

「ほら、そうやって逃しちゃうパターン」

「あー、なんだろ……。そうだね……うん、わかった。オッケー。どんなセミナーなの? そのサーファーなんとか」

「開運サーファーね」

「うん、それ」

「よくぞ聞いてくれました〜」

「うざ」

「まず、運気には八種類あります」

「ちょっと多いな……。どれかひとつだけ教えて。一番大事そうなやつ」

「さすが。そこ聞くよね。運気の中で一番強いのは……つまり、大地の運気です」

「あー……大地ね。はいはい」

「大地の運気を呼び寄せる方法がいくつかあるんだけど」

「呼び寄せるの? 乗りこなすんじゃなくて?」

「呼び寄せないと乗りこなせないじゃん」

「そうなんだ」

「そりゃそうです。まずは運気の呼び寄せ方だけど……」

「いや、空愛、わかった。呼び寄せるのはまた今度でいいや。いまは乗りこなし方の方が聞きたいな。だってそっちがメインの話でしょ? サーファーだし」

「そう! サーファーだからね。運気を乗りこなしてこそ……っていうね」

「うんうん。てかさ、空愛。こんな話しちゃっていいの? 乗りこなし方まで全部しゃべっちゃったら、セミナーの営業妨害になるんじゃない?」

「大丈夫。これは言ってもいいやつだから。むしろいろんな人に言った方がいいんだって」

「あー……そういうね。アレ的なやつだ」

「だから、この話聞いたらぜったい美音もセミナー受けてみたくなるから、まずは無料体験の申し込みして、無料体験で感動したことを美音の友達にも話して広めたら、みんな感動するじゃん? それが感動の輪」

「感動するんだ」

「そう。めっちゃ感動する。わたしも開運サーファー知ってから、感動って言葉の本当の意味がわかった」

「へえ……」

「じゃあ、いくよ。まず、大地の運気の呼び寄せ方だけど」

「いや、呼び寄せる方じゃなくて、乗りこなす方ね」

「あー、そうだったね。ごめんごめん」

「ちなみに空愛、その話さ、あと三分くらいで終わる? あたしが降りるバス停、次なんだけど」

「え、そうだっけ?」

「うん、今日は……友達の家寄るから、次で降りなきゃ」

「そっかー……。でも、三分じゃ終わらないかな」

「詰め込んだらいけるって」

「わかった。じゃあ説明は抜きにしよ」

「え……?」

「説明はぜーんぶはしょって、無料体験の申し込み方教えるよ。それなら三分で済むし」

「あー、そうか、そっちの手があったか……」

「まず、公式アカウントに友達登録して……」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ