違う世界 4
お祭り当日、4人で集まったのだけど、花火が始まる直前に私とサトル君はメグミさんとタケルから離れて別行動。
行く前に、私はメグミさんに、サトル君はタケルに、
「「当日、別行動になるようにして!」」
とお願いされた。
言われなくてもね。
会場はすごい人。これはサトル君とも離れ離れになりそうだな、って思ってたらサトル君が手をつないできた。
相手の体に触れるのはこちらでも愛情表現の1つだと思ってたけど、サトル君はそれほど考えてないようで顔色一つ変えてない。
ちょっと悔しい。
突然の大きな音とともにあたりが明るくなる。
花火が始まった。
思わず空を見上げると、そこには光の群れが丸く花のように広がっていた。
確かに花火だ。変なところで感心する。
次々と打ち上がる火の花。
サトル君も空を見上げていて、心なしか耳が赤い。
私はサトル君の腕にしがみ付いて花火を見あげていた。
そしてサトル君の腕は私の胸にぴったりとくっついている。
なんか急に恥ずかしくなったけど、そんなそぶりを見せないようにして、そのまま空を見上げていた。
花のように丸いの、ハートの形、雨のようなの、赤、黄色、緑、、、様々な火の塊が降り注ぐ。
このままこの時間が続けばいいのに。そうすればサトル君の腕もずっとしがみついていられる。
そうはいかないことはわかってる。
私の胸にチクリと針が差したような痛みが走った。
花火が終わって、しばらく歩きながらメグミさん達を探す。
メグミさん、上機嫌なような怒ったような。
後で聞いたら、
「みんなが見てる前でキスされたぁ、恥ずかしかったぁ」
とプリプリしながら教えてくれた。でも、なんかうれしそうだね。
お祭りで、メグミさんとタケルの関係は一つステップアップした。
それでも、まだ私から見るとお子様なんだけど。
それはそうと、気になるのはサトル君。
花火の時、しっかりと手を握ってきて、『おぉ』って期待したけど、それっきり。
メグミさんとタケルの背中を押す会、の会員同士?友人?
じゃぁ私はって言うと、淫魔だからね、愛情より前に体の関係にもなることあるけど、サトル君にはなかなかそう、、できない。
そんな夏も終わり、学校も始まった。
相変わらずな毎日だけど、気が付くとそばにサトル君がいる。
だからと言って何か私たちの間に進展があるわけではない。
一方、メグミさんとタケルの甘い雰囲気は胸焼けしそうだ。
どうも、少なからぬ男子がそして女子が夏休み後の二人の様子を見てショックを受けていたらしい。
「で、そうだんって?」
ついつい声が険しくなるのは許してほしい。
「あのね、、、ユリさんは経験、キャ、経験豊富だと思うから、、」
まぁ、ぶっちゃけ、タケルとしたい。でも、どう誘えばいいかわからない、ってことだった。
面倒だなぁ。
いろいろアドバイスするけど、やっぱり私の世界とこちらの世界、そして種族の違いがあるから、ほとんどのアドバイスは却下された。
でもね、こういう話するの、嫌いじゃないなぁ。
こういう時は、先行者に聞くに限る。
と言うわけで、今、私は生徒会長のお宅にお邪魔している。
もちろん、ケイもいる。
「なるほどねぇ、まぁ、したいようにするのが良いのだけどねぇ。こういう時は男性がリードする方がいいのだけど」
生徒会長はケイをちらとみてまた私の方をみる。
「そうは言っても、私達と違って避妊も考えないといけないし、簡単ではないわよねぇ」
ケイは男性淫魔で自分で妊娠させるかコントロールできる。しかも二人の様子から見て魔力も十分みたいだから妊娠の心配はないだろう。
「こちらの世界では、成人をして仕事について、結婚してないときの妊娠はいろいろ不都合があるのよ」
なるほど。
「それでも、避妊具があるし、きちんとしていれば大丈夫じゃないかしら」
「それで、あの奥手な二人の背中を押すにはどうすればいいの?」
会長もちょっと考え込む。
「やっぱり、イベントかしら。10月末の文化祭とか、、文化祭って学校で開かれるお祭のことね」
生徒会長に文化祭のことや二人の背中を押すことやそれから、ケイとのことを聞きだしてその日は終わった。
「で、サトル君はどう?」
「へっ?」
なんでここでサトル君が?
色々聞きたがる生徒会長の追及をかわしてなんとか逃げ出したけど、そう言われちゃうと意識してしまう。
それでも、なんとかそういう気持ちを隠しながらメグミさんとタケルのおぜん立てを進める。
気が付くと夏休みが終わって1カ月、10月になっていた。
街にはオレンジや紫の飾りつけがしてある。
「ハロウィンっていうの。アメリカから伝わってきたお祭ね」
メグミさんが教えてくれた。
モンスターに仮装して練り歩くなんて面白いわね。
「文化祭が10月末の土日で月曜日がお休み。だから、今年はハロウィンがお休みなんだよ」
メグミさんがうれしそう。ハロウィンにタケルとデートするつもりなんだろうなぁ。
そしてどうおぜん立てしようかしら。何しろ相手があのタケルだからね。
いろいろ悩みはあるけど何とかなるでしょ。生徒会長が直接メグミさんにアドバイスしているみたい。
そして私はサトル君をどうするか、だね。どうも、生徒会長とメグミさんの思わせぶりな視線がちょっと怖い。
私はサトル君の気持ちがよくわからないまま毎日は過ぎていく。