違う世界 3
きょとんとしたサトル君がちょっと考え事して
「そういえば、あの日、、、、あーー、助けてくれた人ーー」
慌てて私が口を手でふさぐ。
「声が大きい!」
メグミさんも注意する。
「あの日は、授業の合間に生徒会室に忘れ物取りに行って、、」
その時に見たことのない男の後をついて行く女子生徒を見かけたそうだ。
不審者なのに周りは誰も気にしてないのが怪しい。気になってそのあとをついて行ったら倉庫に入った。
なので中を伺っていたら操られるように倉庫に勝手に入って行って。
なかでは女の子を男たちが乱暴している。
サトル君は手も足も声も出せず縛られ猿ぐつわをされた。
一人目が終わって二人目に変ったところで、私が助けに入ったらしい。
「男の特徴は、、覚えてるかなぁ?」
サトル君があやふやながら覚えていた特徴はあいつと重なるところもある。
「やっぱり、ケイが来てるのかな」
「うん、来ちゃった」
奥の部屋から声がかかる。
魔力が足りないからか、それとも、こちらの世界のせいか、全く気が付かなかった。
「そこの聖女様をこっちに返すときにちょっとくっついてきたんだけど」
とメグミさんを指さす。
「へぇっ、聖女?」
びっくりしてるメグミさんはほっといてケイに尋ねる。
「それで、なんでこっちに来たの?」
「うーん、勇者も聖女も見てたら面白そうだったから、こちらの世界も面白そうかなって」
「まったく、、じゃ、魔力はあるのね、魔法陣描いて。帰るよ、向こうに」
「ごめんね、ちょっと色々あって、魔力、、使い果たしちゃった」
弟のてへぺろ見てもかわいくない。
、、って言うことで飛び掛かって頭に拳固ひとつやった。
「ケイ、大丈夫?」
ケイの出てきた部屋からもう一人飛び出してきた。
「会長、、なんで?」
サトル君が叫ぶ。
あぁもう、なにがなんだか。
一言で言うと、魔力を使い果たしたのは、こっちに来たから。
それで男たちを操ってそれで女の子にひどいことさせて魔力を回復しようとしたけど失敗。
貯める前にサトル君を捕まえるために魔力使って、更に私を追い払うために使った魔法で使い果たしたから。
そんな時に会長に出会う。
ケイの容姿が会長の性癖にぴったりだったので簡単に会長を堕とせた、と。
でも、会長は普通の女性なので魔力はあまり回復していない。
会長が経験済みと知ったサトル君がかなりショックというかダメージを受けていた。
確かにきれいな人だからねぇ。
さて、この後どうするかだけど。
「それでね、ぼくはこのままこっちにいたいのだけど」
「何言ってるのよ、そんなのむりでしょ」
「この娘、このままこちらに置いていくと壊れちゃうと思う。ぼくはそんなのいやだ」
あらら、サトル君のHPゼロ寸前ね。
「でも、姉ちゃんが帰れるようには手伝うから、、見逃してくれないかな」
確かに元の世界に戻れるのはうれしいけど、、、
「これ以上女の子をひどい目に会わせないって約束できるならいいんじゃない?」
メグミさんが言う。
「それに、すぐには無理だけど少し時間をもらえば何とかなると思うよ」
ケイも言う。
あーもー、、
「少し考えさせてちょうだい。あと、、、会長さんだっけ?あなたはこの子、ケイの事どこまでしってるの?」
「異世界から来た魔物で、淫魔だっけ? あとは私の精力をあげ過ぎちゃうと私が死んじゃうことかな?」
「そこまでわかってて、」
「そうね、そこまでわかっていても一緒にいたい相手かな」
溜め息が出ちゃう
とりあえず、しばらく保留。
呆けているサトル君はタケルを呼んできてなんとか家に連れて帰ることにした。
それでこの場は解散。来週までにある程度結論出さないとね。
翌日、心配したけどサトル君はちゃんと学校に来てた。
さすがに生徒会はお休みして帰ったけど。
私はアルバイトの合間にメグミさんと相談したけど、やっぱり結論は出ない。
ま、魔力が溜まるまでまだまだ時間かかりそうだからゆっくり考えることにした。
先延ばしね。
そろそろテストがあるらしいのでメグミさんは明日からアルバイトはお休み。
「ユリちゃんがいてくれるから助かるわぁ」
店長さんはうれしそう。たしかに小さい店とはいえ常連さんも少なくないので店長さん一人じゃ大変だからね。
タケルの家に帰るとメグミさんが居た。二人で試験勉強?
それにしては、メグミさんの顔が赤い、、、タケルのやつ何かしたな。
とりあえず、見逃してやるけどやるならちゃんと手順踏んで、、、、って淫魔の私が言うセリフじゃないか。
テストは、メグミさんはばっちり、タケルはそこそこ、そしてサトル君はさんざんだったらしい。
テストが終わると長いお休み。アルバイトだけでなく勉強も。
でも、アルバイトでためたお金でみんなで遊びに行くんだ。
「夏休みに遊びに行ってくれるって言ってたのにぃ」
これは、メグミさんに言っても仕方ない。
テスト結果が散々だったサトル君は仕方ないにしても、そこそこだったはずのタケルも夏休みは学習塾に行く事になってしまった。
そうなるとメグミさんもタケルと一緒にいるために学習塾に行く事になって、三人仲良く夏期講習だって。
二人で勉強、を口実にイチャイチャするメグミさんとタケル。
残された私とサトル君だけど、最初はぎくしゃくしてた。
だって、サトル君は大失恋したし、その相手を私の弟が取っちゃったわけで、まあ複雑よね。
でも、長く一緒にいればそれなりにお互いのことわかってくるし、なによりそばでイチャイチャしている二人に対する愚痴も言いたくなるし。
気が付いたらなんかサトル君のわだかまりが来ているような気がする。
メグミさんが学習塾に行っている間、わたしはいつもの通りお婆さんのところでお仕事。
そして、夕方になると図書館の自習室で皆と一緒にお勉強。
三人は学校の勉強で私はこの世界のことを教わる。
タケルとメグミさんが何やら言いたげにしているけど、二人きりになりたいのかな?
メグミさんと二人になった時にこっそり聞いてみる。
「ねぇ、二人でデートしないの?」
「デッデッデートぉ?」
挙動不審になるメグミさん。
なんかかわいい、けどここは背中を押してあげよう。
「最初から二人きりだと誘いにくかったら、四人で出かけて途中で二人きりにさせてあげるよ」
それでもちょっとうじうじしてるからサトル君にご協力いただこう。
「ねぇ、あの二人だけど」
「それを今の僕に言う?」
「ごめんなさい……」
「でも、幼馴染だし協力してあげたくなるよね」
「そうでしょ、そうでしょ、見てるとじれったくて」
少し考えたサトル君が言う。
「来週、花火大会あるからそれに誘おうかな」
「花火って何?」
「そこからかぁ、、、これ」
サトル君がすまほで花火の動画を見せてくれた。
へぇーー、きれいだ。
「ユリさんから、花火って何?って聞けばメグミさんのことだから一緒に行こうって言ってくれるよ」
「わかった、そうする」
見え見えだったかな。それでもメグミさんもタケルも4人で花火を見に行くことに賛成してくれた。