第九話 蘇れ!幼女愛好会
愛好会の末路は第一話の冒頭部分参照です。
平和だ。ライトに無理矢理連れて行かれた遠征から始まった一連の出来事、その決着としてモロインを殺してから3週間が経った。完璧に平和が戻った。
毎日アリムとミミと一緒に畑をいじり、サミーをはじめとする撤退派の工作に消極参加。今のところミミになんの異常も無い。こういうのでいいんだ。俺が求めるものはアリムとの何気ない日常なんだ。周りから使えない無能と謗られてもどうでもよいのだ。
だから、今俺は非常に迷惑している。
「おーい、聞いてるのか、ハルタ!」
「聞いてますよリーダー」
「お前たまにいきなりボーッとするけど、それなんなの?」
「現状認識ってやつですよ」
レジスタンスリーダー、ライト・ビリオンズハイ。深夜に食堂で一人で飯を食ってたら急にコイツが現れて話しかけられた。コイツと関わって良い事が起こった試しがこれまで一度たりともない。
「…目は結局治らなかったんですね」
ライトの右目に当ててある眼帯を見る。顔は綺麗に整ってるだけにやけに痛々しく感じる。
「オークに食われてしまったからな。流石に治らなかった」
そう言いながら眼帯をとった。うげぇ…ぽっかり空洞が空いている。
「ま、そんなことどうでもいいんだ。前からお前と話したくてな。そしたらこんな時間に一人でご飯を食べてるお前を見かけたんだ…ん?なんで今一人で食ってるんだ?友達とかいないのか?」
うるせーよ、ほっとけ。いちいち疑問に思うな。
「それでな、ハルタ…とても言いにくいんだが…お前レジスタンスの皆んなからめちゃくちゃ嫌われてるんだよ」
「さいですか…」
なんとなく察してた。毎日陰口言われてるし、俺が飯を食ってるとわざとぶつかってくる奴もいるし。
「皆んな曰く私が目を失ったのはお前が弱いからって…いやそんなことは無いんだが…だからな、お前を先遣部隊e班に入れろって声があちこちから挙がってるんだ」
「は?マジですか?」
先遣部隊e班。レジスタンス内で秩序を乱したとされる奴らがぶち込まれる班だ。探索毎の死亡率は2割を超す。要するに体のいい処刑だ。
「e班ってやりすぎでしょ!あそこは殺人とかやった奴が行くとこじゃないですか!」
俺は確かに人殺しだけど誰にもバレてないのに。
「もちろん反対してる奴も多いし、第一私が絶対にそんなことにはさせない。そもそも私はe班の存在自体が嫌なんだが…。とにかく、お前はなぜか異常なほど嫌われてる。あのな、お前がほんとは強いって事を私は知ってる。以前私をオークから助けた時のお前の手際は見事だった。なぜ実力を隠してるんだ?」
「アリムのそばにいたいからです」
「お前はそればっかりだな。私はお前の気持ちを尊重したいが、このままではまずい事になってしまうぞ。…アリムといえば、まさかあの子が、その…男の子だったなんてな。めちゃくちゃ驚いだぞ」
…?ああ、アリムにツノが生えているとバレたあと、コイツに記憶改竄をしてツノが生えてるという記憶を男性器が生えてるという記憶に書き換えたんだった。我ながらアリムに申し訳ないことをしてしまった。
「…暗い話はここまでだ!最近新たなエリアの探索を進めててな、以前ここら辺を治めていた領主の城までたどり着いたんだ。でもどうやら魔族が巣食って根城にしているようでな、近々大規模な攻勢を仕掛けるんだ。成功すれば新たな拠点が…」
うーん、探索の話はどうでもいいが、このままじゃまずいのは確かだ…。
ライトと別れたあと、俺はレジスタンスの基地内を出て森を歩いていた。俺の嫌われようは異常すぎる。今までは無能な厄介者と思われてただけなのに、急に犯罪者と同じレベルで嫌われはじめた。作為的な何かすら感じる。
別に嫌われてもいいんだが、アリムと引き離されることだけは避けたい───おっと、ここら辺だな。
周りと比べて一際大きい巨木。集中して見つめ続ける…現れた。ドアだ。
なかに入ると、腐乱した末に土に還りかけている3つの死体があった。
コイツらは深い怨念と現世への執着を残してこの世を去った筈だ。訳も分からずいきなり殺されたんだからな。
俺が殺したんだけど。
モロインの部屋から持ち出した魔導書を開く。ヤツは腕のいい医者であり、ダークな研究者だった。部屋を漁ったらヤバい本が幾つも出てきた。
これはその内の一つ…死者を生ける死体として蘇らせる禁術が載っていた。
詠唱に随分時間が掛かりそうだな…黒魔術なんて流石の俺もはじめてだ。気合い入れていくか!
おっ!成功したみたいだ。死体が頭蓋を核として肉体を生成していってる。うわっグロい!
さて魔導書の注意事項によると復活後は生前の記憶が曖昧になってるらしいな。つまり俺の名演が必要となる。
「ここは…どこだ?俺たちは…?」
「目覚めたか!同志たちよ!」
ここで3匹に抱きつく!…うわ、ベチョベチョして気色わりいな。
「お前は誰だ…?俺たちはなにしてたんだっけ…?」
「お前ら忘れたのか!?俺たち4人は幼女愛好会の仲間じゃないか!レジスタンスのクソどもに、お前らは殺されたんだよ!」




