第十一話 スポ根ゾンビ
「ダメだ!もっと魔力を練ってから魔法を放て!」
「すみません、ハルタさん!」
「いいか?ゴミ共。俺にとってはこれーぽっちもメリットが無いのに、わざわざ俺はお前らの修行に付き合ってやってんだよ!やる気ねーなら土に還っていいぞ、ダルマ!」
「いえ、還りません!やる気あります!」
「じゃあ結果で示せやゴラ!」
落ち着け、僕。僕はやればできる筈。ハルタさんも期待してくださってるんだ。
テフとヒョロはもう今日の課題を終わらせて、休みながら僕を見ている。10m先の篝火を風魔法で消す課題だ。
深呼吸して魔力を練る。遠くにある篝火を見つめる。
いまだ!…なんてことだ。ダメだった。炎は一瞬揺らいだが、それだけだ。ハルタさんはため息をついて、冷たい目で僕を見た。
「…今日は終わりだ。日が昇る。片付けて帰れ」
「「了解しました!ハルタさん!」」
遠くに座っていたテフとヒョロが聞きつけてテキパキと片付けはじめた。でも、まだ僕は…
「ハルタさん!お願いです!もう一度だけ…次は必ず成功させます!」
「聞こえなかったのか?片付けだ」
冷たい声でそう言うとハルタさんは行ってしまった。終わった。完全に失望されてしまった。
木の幹にかがみこんだ。ダメだ。自分で自分が嫌いになる。どうして僕は、こんなに弱いんだ…。
「もういっそ…消えて無くなりたい…」
「冗談でもそういう事は言うなよ、ダルマ」
「…えっ?ハルタさん?帰ったんじゃ…」
「お前のことが心配になってな、ちょっと戻ってきた」
僕の隣に腰掛けながらハルタさんは言った。
「ハルタさん…僕はダメな奴です…ダメゾンビです…テフやヒョロが簡単にできるような魔法も僕には使えない。こんな僕が、レジスタンスに復讐なんて…」
「よく聞け、ダルマ。俺はお前がダメな奴だと思った事は一度も無い」
「…え?」
「それどころか、3人の中で一番強くなるのはお前だと思ってる。魔法において最重要のファクターは集中力だ。お前はそれが抜きん出ている。テフやヒョロより覚えが遅いからって、それがどうした?お前は大器晩成型だよ。安心しろ、できるようになるまで俺は絶対にお前を見捨てない」
そう言ってハルタさんは微笑んだ。ハルタさん…ハルタさん!
「ハルタさん…僕は…僕は絶対に、貴方の期待に応えます!」
ハルタさんは微笑みながら立って、僕の頭をワシャワシャと撫でた。そうして去っていった。
幸せだ。満たされた気分で布団に入る。僕はハルタさんに期待されてる…そう思うだけで頬が緩む。
「なぁ…お前ら」
「どうした?テフ」
「お前ら、生前の記憶ってある?」
「いやぁ…僕はあんまり無いかな」
「俺の名前さ…テフじゃ無い気がするんだけど」
「…え?でもハルタさんが教えてくれて」
「いや、おかしくない?デブの俺がテフ…濁点抜いただけで。痩せっぽっちの…ヒョロいお前がヒョロで…なんか都合良すぎね?安直というか適当というか」
…テフはなにを言いたいんだ?
「名は体を表すって言いますからね。私は特に疑問に思ってませんよ。それにテフさん、その理屈で行くとダルマさんはどうなるんですか?」
ヒョロの言う通りだ。テフは疲れてるのか?
「…繋ぎ目があった」
…え?
「ダルマの手脚の付け根だよ。一回切り落とされてくっつけたような…」
確かにある。え?どゆこと?ダルマって、そう言う事?
「それにさ、なんかハルタさん、若すぎね?俺たちって3人ともおっさんじゃん。ハルタさんってどう見ても20歳位でしょ。ダブルスコアはあるじゃん。俺たちとハルタさん、本当に仲間だったの?」
「…おいテフ!お前、ハルタさんを疑ってんのか!」
頭にみるみる血が昇る。コイツ、ハルタさんを侮辱してやがる。
「ダルマさんの言う通りです、テフさん。私たちにとってハルタさんはかけがえのない恩人です。たとえ彼がなにかを隠してたとしても」
ヒョロの声は静かだったが怒りが滲んでいた。当然だ。
「いや、そんなつもりじゃ無い!落ち着け2人とも!ただ俺は、もしかしたらハルタさんは…ん?なんだ?今なに言おうとしてたんだっけ?」
「…テフ、お前疲れてるんだよ。早く寝よう。修行に遅れでもしたら、ハルタさんに殺されるよ」
✳︎
聞き耳を立てていてよかった。いい話が聞けた。ヒョロとダルマは俺に心酔しているようだが、テフは少し洗脳が足らないな。
しかし流石に適当に名付けすぎたな…反省しとこう。
にしてもコイツら、いい歳こいたオッサンの会話っぽくねーな。笑える。
さて、ライトから聞き出したレジスタンスの大規模攻勢は10日後だ。そのタイミングで殲滅隊全員と防衛隊の半数が基地を空け、警備が手薄になる。そこでコイツらをけしかけ、俺がカッコよく倒す、と。
催眠レイプ愛好会がやりそうなしょうもないマッチポンプだな。やはり俺には催眠レイプ愛好会の血が流れてるのか。




