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第一話 妹は魔族のハーフ



 月明かりの無い晩で、森の中は真っ暗闇だった。辺りを注意深く見回すと、一際太い木があった。おそらくアレだ。目を凝らす。───ドアのようなものが見えてきた。下らない認識阻害魔法だ。

 普通にドアを開け、普通に入った。中には3人の男がいた。呆気にとられているそいつらの喉笛を風魔法で切り裂いた。その内一人は四肢を切り落とすだけにすませた。


「…え?ギャアアアア!!」


「うるせーよ。静かにしてくれ」


 木の中は案外広く、生活に必要なものは大体揃ってそうだった。椅子に腰掛け、生かしておいた一人を見る。血だらけのダルマ状態だ。


「なに!?なんなのお前!?…!まさかお前が、仲間たちを殺した…!?」


「その通りだ。お前ら幼女愛好会は俺が殺してきた。お前らが生き残りの最後だよな?」


「なんで!?お前誰だよ!俺らはお前になにもしてな──」


 話にならなそうなので首を切り落とす。鮮血が噴き出す。


「…ハァ。疲れた。これで幼女愛好会…ほんとにクソみたいな組織だな…は全滅した筈だ。レジスタンスの中にこんな奴らがいたとはびっくりだな」


 転がっている4つの死体を眺める。


「…お前らみたいなロリコンがいると、俺の妹が危ないかも知れないじゃん」


 ✳︎


 シャベルを突っ込み、木の根を掘り返す。クソつまらない単純作業だ。我ら食糧確保班に課せられた任務はここら一帯の森の開墾だ。


「お兄ちゃん大丈夫?汗だくだけど少し休もうか?」


 声をかけてきたのは俺の最愛の妹、アリムだった。贔屓目無しに見ても、多分歴史上一可愛い女の子だ。絹のような白い髪の毛にパッチリとした二重の目…ただ欠点は、いや、俺からすると普通にチャームポイントなんだが、頭から魔族の証である真っ赤なツノが2本生えている事だ。


「そうだな、アリム。クソ暑いしサボろう」


 少し遠くに行き、木陰にアリムと腰を下ろす。向こうでは班の皆んなが作業している。明らかにこちらを見ながら何か文句を言っている。


「…またハルタがサボってるわよ。男のクセして魔族とも戦わず…」


「…アレの面倒を見なきゃいけないアリムちゃんはほんとにかわいそうよ…」


 おばさん連中は遠くから俺の悪口を言っているらしい。俺は人並み外れて耳がいいのでよく聞こえる。


「またあの人たちお兄ちゃんの文句言ってる…陰口なんてサイテーだよね」


 アリムが頬を膨らませた。俺は訓練したから聴力がいいが、魔族の血が入っているアリムは生まれつき感覚器官が秀でている。


「どーでもいいよ…言わせておけよ」


「お兄ちゃんがほんとは強いこと、私は知ってるからね!自信持ってね」


「まーな!お兄ちゃんはアリムのためなら誰にも負けないくらい強くなれるからな!」




 自室に戻る。アリムとの二人部屋だ。

 今日も一日やり過ごせた。アリムが魔族だとはバレなかった。いや、正確に言えばアリムは魔族とのハーフなんだが。

 俺は常に幻覚魔法を使いアリムのツノを隠している。レジスタンスメンバーは全員魔族を殺したいほど憎んでいる。もし俺がアリムに掛けている幻覚魔法が解けてしまったら、アリムは無事ではすまない。

 だから俺は常に気を張って生活している。幻覚魔法をし続けるというのはなみなみ水が入ったコップをこぼさず持ち続けているようなもので、何かの拍子に溢れてもおかしくない。


「あー今日も疲れた!おつかれさま!」


「おつかれ」


「そーいえばさ、あのおばちゃんたちの言う通りさ、なんでお兄ちゃんは魔族と戦いにいかないの?お兄ちゃんならどんな魔族でも倒せるでしょ?」


「俺はそこまでは強くないよ。それに…」


 それに、魔法の同時使用なんてしたらアリムの幻覚魔法が解けるかもしれない。


「…それに、俺はずっとアリムと一緒にいたいからな」


 アリムは顔を赤くした。照れているようだ。…かわいい。


「…私も!お兄ちゃんだーいすき!」


 そう言ってアリムは抱きついてきた。なんて幸せなんだ…俺が求めてるのはこういう平和な日常だ。

 コンコン、とドアがノックされた。2人きりの時間を邪魔されたことにイラつきながら「どうぞ」と促した。

 入ってきたのはレジスタンスリーダーの女騎士、ライトだった。煌めく金髪に透き通るような白い肌の美少女だ。しかしその美しい顔も綺麗な肌も長年の戦いで傷跡だらけだ。むしろそれも彼女のカリスマを引き立てている。そんな皆んなの人気者が、なにをしにきたんだ?


「ハルタ・イルスタッフ並びにアリム・イルスタッフ!【付近の魔物殲滅作戦】にお前らが抜擢された!」

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