16 勇者の属性
「俺は……魔族側の勇者だっていうのか?」
「あくまでも資質の問題だ」
サイクスが言った。
「魔王様から聞いた話だが、勇者の資質はその者の精神に大きく依拠するらしい。勇者の属性が光であったり闇であったりするのは、そいつの精神性が現れたものだ、と」
「つまり――俺は心の中に光より闇を抱えているってことか?」
「簡単に言えば、そうだな。おそらくお前の心の本質は闇寄りなんだ」
言われてみれば、腑に落ちる部分はある。
俺はいわゆる陽キャではない。
かなり陰キャ寄りの人生を歩んできたし、クラス内でも軽んじられてきた。
「……なるほど」
「納得できたか?」
サイクスの言葉に俺は少しムッとしてしまった。
別に奴に他意はないのかもしれないけど、心の中を見透かされたような気がして不快だったのだ。
「なんだ、怒ったのか? 図星か」
サイクスは驚いたように俺を見た。
「悪かったな。不快にさせたようだ」
「……魔族でも謝るんだな」
今度は俺の方が驚く番だった。
「俺は自分が悪いと思ったら謝罪くらいするぞ」
サイクスが憮然とした顔になった。
「邪悪の化身なのに?」
「魔族イコール邪悪の化身というのは飛躍した考えだな。だいたい『魔』族なんて名称も、もともとは神々がつけたんだ。俺たちは自分が邪悪だと考えているわけじゃない」
サイクスが言った。
少し早口になっているのは、もしかしたら感情的になってるんだろうか?
なんというか――意外と人間的な奴だな、という感想を抱いてしまった。
もちろん、こいつは……いや、こいつらは人類の敵だ。
実際に多くの人間たちを殺し、苦しめてきた種族だ。
それでも、俺は今、なぜか魔族であるサイクスにある種の親しみを覚え始めていた――。
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