15 躯の丘
「おはようございます、時雨様」
一人の少女が一礼して歩み寄る。
「君は……?」
「サーラといいます。サイクスの妹です」
紫色の髪をツインテールにした美しい少女だ。
「兄から、あなたのお世話をするように言われております。なんなりとお申し付けください」
金色の瞳が俺をまっすぐ見つめている。
にこやかな笑顔なんだけど、その眼光は異様に鋭かった。
……お目付け役、だろうか。
「ありがとう、サーラ」
とりあえず俺は彼女に笑みを向けた。
ただでさえ、味方のいない場所に一人でいるんだ。
表面上だけでも友好的にしないと、な。
「サイクスに会えるか?」
「はい、お望みなら兄に取り次ぎます」
「頼む」
俺は魔王城の一室でサイクスと面会した。
「サーラを世話役につけたが、どうだ? 不満なら別の者をつけるが……」
「不満は特にない」
俺は首を横に振った。
「お前は俺を魔界に連れていく際、『俺という人間をもっと知りたい』と言っていたな。要は、俺の能力を調べたいってことか?」
「能力だけではないが……まあ、主に知りたいのはお前のスキルのことだ」
俺の問いにうなずくサイクス。
「お前が【闇】の勇者なら――その力を魔界に役立ててほしいからな」
「結局、その【闇】の勇者っていうのは何なんだ? 魔王との会談でもよく分からないままだった」
「……そうだな。ちょっと場所を変えて話そうか。俺が飛行魔法である場所に連れていく。そこで話した方が色々と理解が速いからな」
俺たちは場所を移動した。
サイクスが飛行魔法を俺にかけ、空中を飛ぶ。
魔界に来るときにはメレーザが飛行魔法をかけてくれたが、サイクスも同じような術を使えるらしい。
もっともサイクスが言うには、メレーザの方が精度や効果が上らしいが……。
ともあれ、俺たちは魔王城からひとっ飛びして、小高い丘の上にやって来た。
「ここは通称を『骸の丘』という。かつて勇者と戦い、散っていった魔族たちを弔った場所だ」
周囲には無数の髑髏が転がっている。
いや、よく見れば、それらはオブジェのようだ。
人間の世界で言う墓石のような感じだろうか。
「正確に言うなら、ここに眠る魔族たちの大半が戦ったのは【光】の勇者ということになる。その名の通り、光の陣営に属する勇者だ」
と、サイクス。
「じゃあ、【闇】の勇者っていうのは――」
「もう想像がついているだろうが」
俺の問いにサイクスがうなずいた。
「魔族と同じ闇の属性を持ち、闇の力を振るう――我ら魔族側の勇者だ」
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