11 試練の明暗
そして――六人の試練は終わった。
「はあ、はあ、はあ……」
那由香はその場に崩れ落ち、荒い息を吐き出していた。
ちょうど今、試練を終えたばかりなのだ。
異空間に入り、体感時間で一か月ほどの試練を受けた。
その中には問答に答えたり、模擬戦闘をしたり、といくつかの試練があったが、彼女はなんとかそのすべてを突破することができた。
正直、運がよかったのだと思う。
彼女以外には豪羅と葉月が試練を突破し、残りの三人は――変わり果てた姿で戻ってきた。
「ううう……みんな……ぁ」
那由香は涙声だ。
その視線の先には三つの人影があった。
「うう……おぉぉ……アアアあぁ……」
うなり声を上げながら、緩慢な動きで歩いている三人。
顔には生気がなく、目はうつろだ。
まるで――ゾンビのようだった。
試練に失敗したらしい三人のなれの果てだった。
『力を得るための代償です。彼らは犠牲になりました』
女神像から冷徹な声が聞こえた。
『ですが、あなたたち三人は力を得ました。非常に喜ばしいことです。時が来れば魔界への門を開き、一気に攻勢に出ることもできるでしょう』
「魔界への……?」
『我が手駒はそろいました。準備ができ次第、こちらから魔界に討って出るとしましょう。そして魔王を滅ぼすのです、【光】の勇者たちよ』
女神の言葉に那由香は呆然となっていた。
今、『手駒』という言葉を使っていたが、まさに自分たちは女神の駒となり、戦う道具として魔王軍に最後の戦いを挑むのではないか――。
不安と恐怖が増すばかりだ。
(時雨くん……会いたい)
こんなときこそ、彼に側にいてほしかった。
だが、彼は魔界にいるのだ。
あるいは最終決戦の際、時雨と再会できるだろうか。
そして、そのとき――。
那由香と時雨は仲間でいられるのか、あるいは。
「敵味方に分かれる……? 嫌……嫌よ、そんなの……」
『それと、あなたたちにはこれを与えておきます。他の勇者たちを導き、魔王軍との戦いに勝利をもたらさんことを――』
ざんっ。
那由香の足元に一本の剣が突き刺さった。
見れば、葉月や豪羅の足元にもそれぞれ一本ずつ剣が突き刺さっている。
『勇者の聖剣です。それはあなた方の能力を最大限にたかめてくれるでしょう』
「勇者の聖剣……?」
那由香は、嫌な予感を覚えていた。
希望の象徴であるはずのその剣が、那由香にはまるで破滅への道しるべのように感じてしまったのだ。
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