8 人と魔族の因縁1
魔王の言葉にガラは引き下がり、サイクス、メレーザと一緒に退室した。
謁見の間に残されたのは俺と魔王だけだ。
「話したいこと、というのは?」
俺は緊張気味にたずねた。
「一言で言えば――勧誘だ」
魔王が俺を見つめる。
「君の潜在能力をサイクスは高く買っているようだ。俺もこうして直接会ってみて同じ感想を抱いた。君のスキル【ネクロマンサー】はさらに成長することで強大な力を発揮するだろう」
「俺の、スキルが……」
「その力を我が魔界のために発揮してほしい」
魔王が身を乗り出した。
「俺に『魔族の手先になれ』と?」
あまり反抗的なことを言うと、最悪の場合は殺されるかもしれない。
ただ魔王のここまでの態度を見ると、それほど乱暴なことをしてくるようには思えない。
なら俺は正直な意見を言った方がいいだろう。
「手先ではなく仲間だよ」
魔王が微笑む。
「もしかしたら君は、人間が正義で、魔族が悪の化身だと思ってるのかい? まあ『敵対者』という意味なら、人間にとって魔族は悪だ。けれど、倫理的な意味なら――俺たちは別に邪悪な存在ではないよ」
「……魔族が大勢の人間を殺すところを、俺は目にしている。明らかに非戦闘要員を……なのに邪悪じゃないと言われても、すぐには納得できない」
「非戦闘員の虐殺なら人間側もやっている」
魔王が言った。
その表情には、相変わらず穏やかな笑みが浮かんでいた。
けれど、目だけは笑っていない。
「彼らは魔族の村をいくつも襲い、虐殺し、略奪し……君らが人間同士の戦争でやっていることと同じさ。我々も『民間人』が犠牲になっている」
「? それは人間側がここに攻め入ってきた、ってことか?」
「そうだ。君たちより前の世代の『勇者』たちがね」
魔王が言った。
「正確に言うなら、人間側に与する『光の勇者』たちが、俺たちの世界に攻め入ってきたんだ。そんなことは太古から繰り返されている。君たちの代ででも、いずれそうなるだろう」
「俺たちがこの世界を侵略する、っていうのか?」
「歴代勇者たちはほとんどがそうしてきた。君たちが同じことをしないとは思えない」
魔王がきっぱりと言った。
「どうして――」
俺はにわかには信じられず、質問を重ねる。
「人間側が魔界を侵略するなんて……理由が分からない」
「理由はいくつかある。けれど一言で言うなら――『利権』だ」
魔王が言った。
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