7 魔王
王都――といっても小さな町だが――に入ると、俺は魔王城内に案内された。
これも『魔王城』という仰々しい名前の割に、小さな建物だ。
イメージとしては町役場に近いかもしれない。
城の最上階まで上がり、謁見の間に入ると、そこに一人の魔族が待っていた。
「よく来てくれたね。俺が魔王だ」
柔らかな金髪に碧眼、優しげな顔立ち。
人当たりの良さそうな好青年といった感じの魔族だった。
「えっ、あんたが魔王……!?」
イメージと全然違う。
たとえば、威厳のある老人。
あるいは、絶世の美貌を持つ女。
あるいは――。
創作物で見かける魔王のビジュアルやキャラクターには何パターンもあるけど、こういうタイプはあんまり見かけない気がする。
というか、とにかく威厳がない。
第一印象は『いい奴そう』である。
もちろん、仮にも魔界を統べる王なんだから外見通りの印象だと決めてかかるのは危険だ。
「人間がここを訪れるのは何百年ぶりかな? そうそう、『彼』以来だ……ふふ、歓迎するよ」
と、魔王。
「さっそくだけど彼と二人で話をしたいんだ。サイクス、メレーザ、ガラ……君たちは席を外してくれるかな?」
「承知しました」
「失礼いたします」
サイクスとメレーザが一礼して背を向け、
「ち、ちょっと待ってください、魔王様! 得体の知れない人間一人を残して俺たちには退室しろって言うんですか!?」
ガラが抗議をした。
「もしこいつが魔王様に危害を加えたらどうするつもりです? 俺は退室なんてしませんからね!」
「ガラ」
魔王は困ったような顔になり、
「俺は彼と二人だけで話したいんだよ。危険はない。彼……時雨くんはだまし討ちをするようなタイプには見えないからね」
「でも――」
「ガラ、いい加減にしろ」
サイクスが割って入った。
「魔王様のお言葉は絶対だ。それ以上、不忠を押し通すなら俺がお前を始末する」
「いやいや、それは困るよ、サイクス」
今度は魔王が仲裁した。
「ガラがここまで言うのも、俺に対する忠誠心からだ。決して不忠ではなく、これは讒言だと俺は解釈している」
「魔王様……」
「同様に、今の君の態度も忠誠心の現れだ。はは、難しいね。お互いに俺のためを思ってくれているのに、真っ向からぶつかることになってしまう」
なんだか、魔王というイメージとは程遠いキャラクターだな。
俺は目の前の魔王を見て、戸惑いっぱなしだった。
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