5 サイクスの見立て
「これが『門』だ」
その後、十分ほど飛んだ後、俺たちは荒野に着地した。
目の前には黒ずくめの巨大な門があった。
全長は10メートルを超えたくらいだろうか。
飾り気のない直線的なデザインの門。
中央から開くタイプになっているようだけど、今はぴったりと扉が閉じていた。
「おい、サイクス。本当にこいつを連れてくのかよ」
ガラが言った。
「なんだ、ガラ。今さら」
「人間ごときを魔界に連れて行くのは、やっぱり納得いかねぇな」
「なら、俺が提案したときに反対すればよかっただろう」
「俺は馬鹿だからよぉ。そんなに早く考えられないんだよ」
サイクスの言葉にガラが吠えた。
「飛びながら考えて、やっと結論が出た。俺はやっぱり人間を連れていくっていうのは気に食わねぇ」
「あら、面白そうだと思うけど」
一方のメレーザは微笑みながら、俺に寄り添った。
ふわり、と花のような香りが漂ってきた。
魔族でも、こんないい匂いがするんだ……とちょっと驚く。
「そもそも、こいつを連れて行くのは、要するに戦力に加えるためだろ? けど、こんな弱そうな奴が入っても、魔王軍が強くなるわけじゃねぇ」
「お前は相変わらず目の前の出来事しか見ないんだな、ガラ」
サイクスが肩をすくめた。
「ああ?」
「俺がこいつを連れて行くのは、現時点での強さを見たからじゃない。実際、現時点の強さはゴミみたいなものだ」
「……いや、そこまで言われると」
思わず憮然となる俺。
「はは、ちょっと言い過ぎたか。ただ、今の俺たちとお前では戦闘能力に大きな差があるのは確かだ」
と、サイクス。
「ただし」
ニヤリと笑う。
「こいつの潜在能力はすさまじい。もしかしたら数か月後――いや数週間後には追い抜かれているかもしれんぞ?」
「ハア?」
ガラが眉を寄せた。
「たかが人間が、俺たち高位魔族を追い抜く? それも短期間で……あり得るか、そんなこと!」
「俺はあり得ると踏んだ」
怒るガラにサイクスが言った。
「だが、あくまでもそれは俺の判断だ。だから、魔王様に上申して最終判断を仰ぐのさ」
「魔王様に……」
「あの方はきっと興味を持たれるはずだ。俺はそう確信している」
俺は――魔界で魔王と対面する予定なのか。
ごくりと喉を鳴らした。
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