3 強くなるために
「力を……得る……?」
那由香は王の言葉をつぶやいた。
「あたしたちのスキルを強くできる、ということですか?」
葉月が周囲を代表するようにたずねた。
「そうだ」
「……どうして、もっと早く言ってくれないんですか」
葉月が王をにらんだ。
「早い段階でスキルを鍛えていれば、奴らに対してもっと戦えたはず! それを――」
「危険の方が大きい。今のまま勝てるなら、それが最善。私はそう判断した」
王が静かに告げた。
「実際、中級魔族戦では時雨殿が魔族を圧倒したそうだね。高位魔族についても、十分に戦えると想定していた」
「……王様」
「私の見立てが甘かった……甘すぎたよ。すまなかった」
王が深々と頭を下げる。
「その試練を受け、成功すれば君たちの力は大きく上昇する。が、失敗すれば、おそらく生きて帰って来られない」
その場の全員の表情がこわばった。
「だけど――今のままじゃ、どうせ高位魔族には勝てない。どっちにしても殺される」
葉月が言った。
「それなら『試練』とやらに賭けてみるのも悪くないかもね」
「へっ、魔族だけじゃねぇよ。俺が最強であるためには。いまより強い力がいる。乗ったぜ、王様」
豪羅が前に出た・
さらに数人のクラスメイトが進み出る。
彼らはいずれも命懸けのリスクを承知で、自分の力を強くしたいという意思表示をしたのだ。
「全部で……五人か」
王が進み出た人数を数えた。
「他の者は挑まないということか。もちろん強制はしない。簡単に命を懸けることなど、誰しもできないよ。たとえ勇者でも」
他のクラスメイト達は、いずれも顔を見合わせていた。
確かに――失敗すれば死ぬかもしれない、と言われれば、躊躇するのが当たり前だ。
むしろ進み出た五人が……特に迷いなく名乗り出た葉月と豪羅がおかしいのかもしれない。
(だけど――)
那由香はうつむき、自分の感情を整理する。
自分はどうするべきなのか。
自分はどう感じているのか。
自分はどうしたいのか――。
(時雨くん……)
心に浮かぶのはクラスメイトの少年の顔。
那由香に対して優しく微笑む顔。
あの顔に、二度と会えなくなるのは嫌だった。
そのために、自分にできることがある。
「あのっ……!」
那由香は半ば反射的に前に出ていた。
「私も、挑戦します――」
【読んでくださった方へのお願い】
面白かった、続きが読みたい、と感じた方はブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです……!
評価の10ポイントはとても大きいのでぜひお願いします……!
評価の入れ方は、ページ下部にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところにある
☆☆☆☆☆をポチっと押すことで
★★★★★になり評価されます!
未評価の方もお気軽に、ぜひよろしくお願いします~!