18 サイクスの提案
「――ふん、お前は他の連中のような【光】の勇者とは違うようだ。なるほど、俺の心の琴線に触れたのは、そのせいか」
「【闇】の勇者……?」
以前にも同じ言葉を聞いたことがあるけど――。
魔族サイクスはその言葉について詳しく知っているのか?
「【闇】に属する者が、どうして人間なんかとつるんでいやがる」
サイクスが俺に問いかけた。
「えっ」
「お前がいるべき場所は、むしろこっちだろう」
と、手を差し伸べる。
何を言ってるんだ、こいつは――。
予想外の行動に俺は一瞬、思考がフリーズする。
「俺たちの元に来い、時雨」
サイクスが誘う。
「お前が力を活かす場所は、俺たち魔族のところだ。同じ【闇】に属する者同士――きっと真の仲間になれるはずだぞ」
「……さっきから何の話か分からない」
俺はそれだけの言葉をなんとか絞り出した。
ただ、恐怖感が少し薄れていくのを感じる。
さっきまでは恐怖の『麻痺』だったけど、今ははっきりと『薄れて』いる。
信じられないことに――。
サイクスの言葉を受けて、俺の心のどこかにこの男に対する親近感のようなものが湧き始めていた。
そう、親近感だ。
相手は魔族だし、人殺しだし、別にお友達になりたいなんて感情は微塵もない。
そうじゃなくて、この親近感の正体は――。
おそらくは、きっと。
「仲間意識……」
ごくりと俺は喉を鳴らした。
戸惑いを強くして、俺はサイクスを見つめ直した。
さらに残りの二人にも視線を向ける。
黒ずくめの細身美女と、甲冑をまとった筋肉質の巨漢。
いずれもサイクスと同じく完全な人間型である。
「仲間たちが気になるか? 黒服の女はメレーザ、鎧を着たデカ男はガラだ」
と、サイクス。
「それよりもさっきの返事はどうした? 俺たちと一緒に来るのか、来ないのか」
「もし断ったらどうする?」
俺は警戒心を最大に高めた。
「……何?」
サイクスがスッと目を細める。
全身をすさまじい悪寒が貫いた。
「殺す」
サイクスが静かに告げた。
「断るなら、お前は敵だ。この場で殺す。それからこの都の人間すべてを殺し、さらに逃げていった連中も殺す」
「俺がお前たちに付いていくなら、どうする?」
俺が再度たずねた。
「その場合は攻撃を中止してやろう」
サイクスが小さく笑った。
「人間どもの中に、お前のような【闇】に属する者がいるかもしれん。ただ、まずはお前という人間を知ることが優先だ。その結果次第では、俺たち魔王軍の侵攻戦略も変化するかもしれない」
「……分かった。じゃあ、お前たちの元に行く」
俺は深々と息を吐き出した。
現状、おそらくこれしか答えはない。
みんなを救うために。
俺自身が生き残るために。
そして――絶大な力を持つ高位魔族に対抗するために。
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