17 魔王軍、第二波4
【24.6.22】
16と18の間にこの話を投稿するのを忘れてました……すみません<m(__)m>
「ひ、ひいいいっ、殺されるぅぅぅぅっ!」
「助けてぇぇぇぇっ!」
クラスメイトたちはいっせいに逃げ出した。
続けざまに二人殺され、完全にパニック状態に陥っている。
どうやらさっき殺されたのは宮尾千佳のようだ。
けれど、他の誰も彼女を悼むような言葉はない。
悼む余裕すらない。
あの葉月ですら、
「し、死んでたまるか……っ!」
引きつった顔で逃げていく。
その場に残ったのは俺一人だった。
「……ほう? お前は逃げないのか」
「お前たち三人を相手に背中を見せる方が、よっぽど怖いよ……」
俺はうめいた。
もちろん、俺だって恐怖でいっぱいだ。
今すぐ逃げ出したい。
けれど、背中を見せれば完全に無防備だ。
それなら、こうして立ち向かった状態で、隙を見て逃げ出す方がまだマシだろう。
いや――戦い方次第で、まだ勝てるかもしれないし。
まず、やれることを全部やるんだ。
「肝が据わっているな。人間にしては大した精神力だ」
魔族が微笑む。
「おっと、名乗るのが遅れたな。俺はサイクスという」
「……夜天宮、時雨」
「時雨か。よい名だ」
嬉しそうに笑うサイクス。
「気に入ったぞ」
「そいつはどうも」
俺は軽口を言ったが、喉がカラカラで上手く言葉が出てこなかった。
と――、
ひゅんっ。
上空のサイクスが突然地面に降り立った。
「……!?」
なぜわざわざ降りてきたんだろう。
俺の頭上を取れる空中にいたほうが、どう考えても有利だろうに。
サイクスはゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
銀髪に紫の瞳、ゾクリとするほど美しい少年だ。
「……主」
隣でミラージュが剣を構える。
「いざとなれば、私が体を張る。主は逃げられるようなら逃げるんだ」
「いや、無理だろ」
俺は小さく笑った。
逃げ切れるわけがない。
なら、せめて抵抗できるだけしてみるか。
この期に及んで、自分でも驚くほど冷静になっているのが分かった。
恐怖がマヒしていた。
そのせいで思考がクリアになり、思ったより淡々とした気持ちで状況判断ができている。
サイクスが俺の前方数メートルの場所で足を止めた。
「……お前、もしかしたら」
俺を見て、ぴくりと片眉を寄せる。
「【闇】の勇者――?」