14 魔王軍、第二波1
カッ!
その瞬間、ドラゴンが火炎を吐き出した。
真下の、王都に向かって。
王都から離れた街道にいる俺たちにはどうしようもない。
次の瞬間、王都を爆炎が包んだ。
現代社会でいえば、ミサイルが都市部を直撃したような感じだろうか。
衝撃波による突風が馬車にまで吹き寄せ、車体が激しく揺れる。
「くうっ……」
俺は体をぶつけないよう椅子にしがみついた。
葉月は俺に抱き着いている。
「馬車を止めろ」
隊長が御者に言った。
それから俺たちを振り向き、
「勇者殿、私は王都に向かいます。勇者殿はどうなさいますか」
と、たずねてくる。
「俺も行きます」
「厳密には王様の命令に王都防衛は入ってないかもしれないけど、このまま放っておくなんてできるはずがない。一緒に戦いましょう」
「……かたじけない。あなたが来て下さるなら、本当に心強い」
「あたしも行く」
と、葉月。
「いちおうこれは命令外の行動だぞ?」
「あら、勇者としての仕事は魔王軍を討つことでしょ?」
葉月が微笑んだ。
「相手の数も分からないし、戦力は一人でも多い方がいいじゃない。ま、あたしが危なくなったらちゃんと守ってよね、無敵のエース様」
「エース様はよせ」
俺は苦笑しつつ、
「じゃあ、行けるところまでは馬車で行きますか?」
「はい。相手から狙い打たれる可能性はありますが、徒歩ではどれだけ時間がかかるか――」
「もし魔王軍が魔法などの飛び道具で撃ってきた場合は、俺の方で迎撃するから大丈夫です」
俺は隊長に言った。
「行きましょう。少しでも早く」
王都に入ると、あちこちに魔族を見かけた。
彼らはいずれも人々を追い立て、あるいは建物を破壊し、暴虐の限りを尽くしている。
「出ろ、ミラージュ、ソードマン、レッドメイジ、死神、アサルトライノ、さらに中級魔族たち」
俺はすべてのしもべを一度に呼び出した。
「この町には大勢の魔族が暴れ回っているようだ。見つけ次第、片っ端から殲滅しろ」
俺は彼らに命令した。
総力戦で一気に奴らを叩く――。
「……ほう。【ネクロマンサー】のスキルか。それも第三解放まで到達しているとは」
「たかが人間といえども、第三解放スキルは厄介ね」
「関係ねーよ。人間ごとき、俺様が全部ぶっ潰す」
上空から三つの声が響く。
振り仰げば、空中に三人の魔族が浮かんでいた。




