10 俺は成長の証を見せる
「――いくぞ、葉月」
俺は地面を蹴って突進した。
葉月は自然体で構えている。
彼女のスキルは、俺の攻撃を引き金にカウンターで発動するようだ。
そして、そのカウンターは極めて不規則な軌道で、さっきは避けるのがやっとだった。
もう一回避けろと言われても無理かもしれない。
だから――。
「はあっ!」
俺は拳を繰り出した。
いちおう、彼女に直撃しないようなギリギリの軌道にしてある。
まともに当てたら怪我させてしまうからな……。
「発動♪」
その瞬間、葉月がカウンターで拳を繰り出した。
そこから放たれる衝撃波は――。
俺を素通りし、ブーメランのような軌道を描いて、俺にふたたび襲い掛かって来た。
「くっ……」
俺は全身のばねを使い、そこから加速。
葉月の背後に回り込んだ。
「えっ……!?」
俺に向かっていた衝撃波がそのまま葉月を直撃する。
「ひ、ひいっ……」
「ブラッドクロウ!」
俺はその瞬間、しもべを呼び出した。
ずおおおおっ……。
地面の影から湧き出してきた中級魔族が、衝撃波の前に立ちはだかり、壁となって葉月を守った。
「……ふう」
「あ……」
葉月はその場にへたりこむ。
「勝負がついた後だから、俺以外の奴の力を借りてもいいよな?」
俺は葉月を助け起こした。
「あのままだと葉月、怪我してたし」
「う、うん……ありがと」
葉月は素直に礼を言った。
「これって時雨くんの『しもべ』だよね? 【ネクロマンサー】ってスキルの」
「ああ。こいつは特に生命力が高いし、最初から壁役にするつもりだった」
言って、ブラッドクロウに微笑む。
「ありがとう、ブラッドクロウ」
ヴンッ。
中級魔族の両眼が妖しく光った。
かつては敵だったこいつも、今は俺の忠実な配下だ。
「あー……結局、力で圧倒されちゃったね」
葉月は苦笑した。
「本当、すごいよね。召喚されたばっかりのときは、言っちゃ悪いけどクラスのお荷物って雰囲気だったのよ」
「だろうな」
俺も苦笑する。
「スキルが目覚めて、しもべを増やして……だんだんと強くなれたんだ」
「もう完敗」
葉月はため息をついた後、ふたたび微笑んだ。
「でも、ま、頼もしいかな。我がクラスのエースとして、これからもよろしくね」
「エースとかは分からないけど、がんばるよ」
俺は葉月に言った。
「もうこれ以上誰も欠けずに――元の世界に帰りたいからな」
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