9 場数
次の瞬間、彼女が拳を繰り出した。
鋭くはあるが、あくまでも通常の人間のレベルを脱しない程度の一撃――。
ぐんっ……!
その拳の先から衝撃波が放たれた。
衝撃波を放つ能力か……?
俺の判断は、しかしすぐに裏切られる。
衝撃波の軌道が不規則に変化したのだ。
反応しきれない――。
ヒヤリとしつつも、
「……ちいっ」
俺は大きく跳んで避ける。
頭で考えていたら間に合わなかった。
体が勝手に動いた感じだ。
スキルがさらに覚醒して、俺のステータスが大幅に上がっていたからこその超回避だった。
「やりづらい……」
俺は小さくうめいた。
どうやら不規則に変化する衝撃波が彼女のスキルらしい。
いや【カウンターショット】という名前だから、相手の攻撃のカウンターとして初めて発動する類かもしれない。
いずれにせよトリッキーな技だった。
「ふふ、単純な破壊力なら君が上。でも、あたしの攻撃は軌道を読ませない」
葉月が悪戯っぽく笑った。
正面から叩き伏せるバトルスタイルのランや剣咲とは違う、というわけだ。
「さあ、いくらでも攻めてきていいよ? 力押ししてきなさいよ。強引な男って嫌いじゃないよ。あたし」
葉月の笑みが妖しく、蠱惑的なものに変化する。
俺は表情を緩めない。
どうする――。
攻め方を、考える。
だけど有効な手立てが思い浮かばなかった。
俺のステータスが上がったといっても、しょせん俺自身は戦いの素人なんだと思い知らされる。
場数が違う。
武道をやっていた剣咲や、ケンカの経験が豊富そうなランと違い、俺はケンカなんてほとんどしたことがないし、スキルを使った実戦だってまだまだこれからだ。
だけど……いや、だからこそ。
こういう『実戦』は貴重なんじゃないか。
どう攻めればいいか分からない、なんてまさに実戦そのもの。
葉月は貴重な練習相手だ。
そう考えると、気持ちが楽になり、同時に落ち着きが戻ってきた。
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