8 葉月の【カウンターショット】
「じゃあ……ちょっとだけ手合わせしてよ」
葉月が俺に詰め寄った。
「葉月――」
「まあ、あたしが君より弱いのは分かってるけどね。あからさまに言われると腹が立つのよ」
「悪かったよ。本当に……」
「謝ってほしいわけじゃない。あたしはただ――事実を知りたいだけ」
言って、葉月が俺から距離を取った。
「さ、やりましょ?」
「俺と君の力の差を正確に知りたい――ということか?」
「そ。ほら、遠慮は無用よ。でも油断したら、あたしに負けちゃうかもよ?」
葉月が悪戯っぽく笑った。
「ち、ちょっと待てよ、どうして二人が戦うんだ」
「二人ともやめろよ――」
他のクラスメイトたちは戸惑っている様子だ。
けれど、誰も止めようとしない。
葉月はこのメンバーの中でスクールカースト最上位だし、彼女の意志を邪魔するような行動はとりづらい、ってことだろう。
逆にスクールカーストでいえば最底辺のはずの俺に対しても、みんなは妙な遠慮を見せているように思えた。
それだけ――全員の認識の中で、俺の存在は『カースト位置が上がっている』といったところか。
実際、以前に比べれば格段に『尊重されている』ような気配を感じる。
出来れば、異世界に来る前に……平穏に生きていたあの頃から、尊重してもらいたかった。
そうすれば、俺はもっと平和な学生生活を送ることができたのに。
毎日、学校に通うのが億劫でもなく、もっと楽しく過ごせていただろうに――。
「……いや、今さら言っても仕方ないよな」
俺は頭を切り替え、葉月に視線を戻した。
「いいぞ、葉月。いつでも来てくれ」
「じゃあ、遠慮なく」
葉月が身構えた。
腰を落とし、右手を前に左手を腰の辺りに置き、どことなく拳法を思わせる構えだ。
「あたしのスキル名は【カウンターショット】」
葉月が告げた。
「名前からして能力の中身はバレバレだよね?」
「カウンター……か」
俺は彼女を見つめる。
確かに能力の内容そのままなスキル名だ。
だからこそ――警戒が必要だった。
スキル名通りの能力なのか。
何か『裏』があるのか。
葉月は頭がいい。
おそらく後者だろう。
そのうえで今の台詞を告げたのだ。
スキル名そのままの能力なのか、違うのか――俺を考えさせ、混乱させるために。
「なら俺は――余計なことは考えない」
どんっ!
地面を蹴り、一気にトップスピードまで乗って距離を詰める。
俺のステータスは常人を超えている。
葉月の身体能力が普通の人間程度なら、完全に圧倒できる――。
「はあっ!」
拳を放った。
全力で食らわせると、葉月が大怪我をする可能性がある。
そもそも殴りたくなんてない。
だからギリギリで当てないような軌道にしてあった。
あくまでも彼女を無力化するための一撃だ。
すると――、
「ふふっ、発動♪」
葉月の口の端が笑みの形に吊り上がる――。
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