6 隣国へ出立
「時雨くんの後ろに三人の人影が見えるの」
那由香が言った。
例の【予知】である。
今回は彼女に今後の戦いの行方を見てもらった。
とはいえ、どうやらかなりボンヤリとした未来しか見えなかったそうだ。
ただ、その中で唯一はっきりと見えた映像が、今言った話らしい。
「俺の後ろに三人の人影……それって味方ということか?」
「分からない。ただ、戦っている感じじゃなくて、付き従っている雰囲気だった」
「うーん……新しいしもべってことか?」
「うん。少なくとも時雨くんが今まで使役している『しもべ』とは見た目が一致しなかったの」
と、那由香。
「なら、新たにしもべを三体手に入れるって予知なのかな」
まあ、戦力が増えるのはいいことだ。
今回の【予知】の内容は、少なくとも俺にとってプラスになるものだと思う。
ただ――一つだけ気になるとしたら。
俺の最近の『しもべ』の中にはクラスメイト――いや元クラスメイトが混じっている。
俺が近い将来新たにしもべを三体加えるのだとしたら、その中に今後の戦いで殺されるクラスメイトが混じっているのかもしれない。
今後の戦いで新たにクラスメイトの誰かが死ぬのかもしれない。
出立の日がやって来た。
今回は隣国であるザガーニ公国への援軍だ。
魔王軍の一隊がザガーニの正規軍を蹴散らし、王都近くまで攻め入っているという。
それを倒すため、前回と同様に俺と選抜メンバーが向かうことになった。
「気を付けてね、時雨くん」
那由香が俺の出立を見送ってくれた。
非戦闘要員の彼女は今回も留守番役だ。
「行ってくるよ」
俺は彼女に微笑んだ。
と、那由香が俺の手をぎゅっと握る。
「私も……戦えたらいいのに」
涙目だ。
「那由香……?」
「最近、特に思うの。こうやってあなたを見送るだけなのが歯がゆい、って」
「那由香には那由香の役目があるよ。戦うのは俺に任せてくれ」
俺はもう一度微笑んだ。
『戦うのは任せてくれ』なんて、ちょっと前の俺からは絶対に出てこなかったセリフだ。
そのことに軽く驚きつつも、俺はもう勇者の戦力の中心にいることを自覚した。
自覚するしかなかった。
本当は、戦いなんて好きじゃない。
恐怖も不安もある。
けれども――やるしかないんだ。
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