7 俺のスキルはさらに進化する
「剣咲……お前もアンデッドモンスターに変わったのか?」
首無し死体に向かって呼びかける。
そう、クラスメイトの田中や鈴木は中級魔族との戦いの後、アンデッドモンスターに変貌した。
そして、俺のしもべになった。
アンデッドの能力は、生前の能力に依拠する。
剣咲がしもべになれば、『戦力』としては十分だろう。
――などと冷静に考えている自分に少し驚く。
思ったほど動揺していない。
生まれて初めて人を殺したっていうのに。
以前に盗賊と戦った時は生きて捕縛し、法の裁きを受けさせようと思った俺が――。
その後、盗賊をあっさり殺した田中と鈴木に非難めいた気持ちを抱いた俺が――。
今は、自分の手で人を殺めておきながら、冷徹な計算をしている。
今後、王国に糾弾される可能性も考えると、手持ちの戦力は少しでも多い方がいい。
なら、剣咲もしもべに加えるべきだろう。
『剣咲刃がアンデッド状態になりました。しもべにしますか?』
半ば予想していたアナウンスが流れた。
俺の決断を促すように。
「ああ、しもべにする」
俺は即答する。
『剣咲刃がアンデッド「アサルトライノ」として蘇生しました』
ヴ……ンッ。
剣咲の死体が黒いモヤに包まれ、それからゆっくりと立ち上がった。
ずずず……。
両腕の断面が盛り上がり、再生した。
さらに斬り落とされた首を自ら拾い上げて、首の上に乗せる。
どうやらくっついたらしく、サイの獣人はぶるぶるっと全身を震わせた。
「今からお前は俺のしもべだ。俺のために戦え。いいな?」
ヴンッ!
剣咲――いや『アサルトライノ』の両目がまぶしく輝いた。
どうやらソードマンやレッドメイジと同じく言葉を発することはできないらしい。
その方が、いい。
なまじ話すことができると、生前の剣咲のことを思い出してしまうからな。
こいつはアンデッドモンスターであり、俺のしもべだ。
そう割り切りたい。
さらに、
『スキル【ネクロマンサー】が第三段階に達しました』
『服従させられるアンデッドの範囲が解放されました』
『最下級、下級、中級アンデッドに加え、上級のアンデッドをしもべにすることが可能です』
『さらに、服従させたアンデッドの能力の大部分が、術者のステータスに反映されるようになりました』
「スキルがパワーアップした……!?」
『石板に封じた「ブラッドクロウ」を解放し、しもべにすることが可能です』
『解放を行い、しもべに加えますか?』
アナウンスが連続して流れる。
これは……!
一気に――強くなれる予感がした。
「よし、ブラッドクロウをしもべにする」
俺はそう答えた。
すると空中に石板が出現し、そこから黒いモヤがあふれた。
モヤは漂いながら、やがて魔族ブラッドクロウの姿へと変化する。
石板に封じられていたブラッドクロウが解放されたんだろう。
「マスター、今よりは私はあなたのしもべです」
ブラッドクロウが俺の前に平伏した。
以前は敵として相対したが、今はそんな敵意なんて全く感じない。
俺への服従と忠誠心に満ちた雰囲気だ。
「お前は魔族だけど、これからは俺に服従するということでいいのか?」
「かつての私は魔族でした。ですが、今はマスターの手駒。ただのアンデッドモンスターです。何なりとご命令を」
ブラッドクロウは恭しく言った。
敵だったときは苦戦した相手だけど、こうして味方になったと思うと心強い。
実際、戦闘能力でいうなら、こいつが俺のしもべの中で最強かもしれない。
「じゃあ、戦闘の際には頼りにさせてもらう」
「マスターの期待に応えます」
ブラッドクロウが頭を下げた。
「これでメインの戦力になるしもべは六体か――」
俺はしもべたちをグルリと見回した。
白銀の鎧の騎士『ミラージュ』。
黒いローブと大鎌を備えた『死神』。
青い騎士『ソードマン』と赤い魔術師『レッドメイジ』。
サイ型の獣人『アサルトライノ』。
そして、中級魔族『ブラッドクロウ』。
かなり強力な布陣になってきた。
「あとは――俺自身のステータスか」
以前は、服従させたアンデッドの能力の『一部』が俺のステータスに反映される、ということだった。
だけど今回、それが『大部分』に変わった。
俺のステータスは大幅に変わっている可能性がある。
「ステータスオープン」
俺は自分の能力値を確認してみることにした。
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