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6 剣咲の末路


「た、助かった……!」


 剣咲はゼイゼイと息をついていた。


「よかった……」


 俺は安堵とともに全身の力が抜けるのを感じた。


 さすがにこれ以上の力が入らない。

 その場に崩れ落ちる。

 と、


「くくく――本当にお人よしだよな、お前は」


 剣咲が笑っていた。


「わざわざ俺を助けた上に、お前はほとんど戦闘不能か? ええ?」


 奴が近づいてくる。


「今なら簡単に殺せそうだな」

「っ……!」


 こいつ――。


 俺は呆然となった。


 別に恩を売る気はない。

 だけど、俺はお前の暴走を止めたじゃないか。


 その俺を、お前は躊躇なく殺そうとするのか?


 そこまで――人間としての心を無くしているのか?


 いや、これこそが剣咲の本性であり本質だということなのか?


 だとしたら、あまりにも悲しい人間だ。


「お前だって聖剣の力を失っている」


 俺は剣咲をにらんだ。


「もう戦闘力はほとんど残ってないだろ?」

「はっ、お前よりはマシだ」


 剣咲が笑う。


 どうする――。


 奴はまだ【獣化】状態のままだ。


 聖剣の力をなくしても、本来の【獣化】の力だけで剣咲はクラス内上位の戦闘能力を持っている。


 今の俺に対抗できるか――。




 ざんっ!




「がっ……!?」


 突然、剣咲の右腕から鮮血がほとばしった。


 ざんっ!


 続けて左腕からも。


「ぐあああ……!」


 先の戦いでランに切断された両腕が、ふたたび切り落とされ、地面に転がる。


「く、くそがああああああ……」


 剣咲は苦悶の様子で顔をゆがめていた。


「死神――」


 俺は驚いて剣咲の背後に視線を向ける。


「気配の隠蔽はお手の物だ。俺は死神だからな」


 淡々と告げる死神。


「強力な装甲に覆われていても、以前に切断された箇所は脆さが残っていたな。簡単に斬り落とせたぞ」

「ぐあああああ……」


 剣咲はその場に崩れ落ちた。


「……剣咲」


 俺はよろよろと立ち上がる。


「ただじゃすまさねーぞ。お前も、それにお前の大事な那由香も……めちゃくちゃにしてやる……!」


 剣咲の目が血走っていた。


「っ……!」


 那由香の名前を出され、俺はぞわりと全身が粟立つのを感じた。


「お前は――」


 きっと性根は変わらない。


 ここで見逃しても、必ずこいつは俺を狙うし、那由香だって――。


「へへへ、お前みたいな甘ちゃんに俺を殺すことはできねーよ。必ず復讐してやるからな――」

「【ファイアバスター】」


 俺は一声、告げた。


 ボウッ!


 地面に落ちた両腕が炎に包まれ、消滅する。


「あ……」

「これでお前の両腕は失われた。俺や那由香に危害を加えられないように」

「て、てめぇぇぇぇっ……!」

「――いや、やっぱり戦闘力を奪うだけじゃ駄目だな」


 なおも牙をむく剣咲を見て、俺は最後の決断を下す。


「さよならだ、剣咲」


 ――【フライングソード】。


 魔力剣のスキルを発動する。


 ざしゅっ!


 剣咲の首が両断され、宙に舞った。


 ごろり……。


 俺の足元に剣咲の首が転がってきた。




 殺してしまった。


 俺が、人を。

 しかもクラスメイトを。


「マスター……」


 ミラージュが声をかけてきた。


「ショックを受けている様子だな」


 死神も声をかけてきた。


「俺は――」


 言葉が、出ない。


 剣咲は明らかに暴走していた。

 放置すれば、俺だけじゃなく那由香にまで危害を加えられると思った。


 実際、奴が今までしてきたことを考えれば、俺も那由香もどんな目に遭っていたか分からない。


 特に、那由香がこいつに何をされるか――。


 考えると、頭が真っ白になった。


 一瞬、思考が途切れ、何も考えられなくなった。

 そして衝動的にスキルを使い、奴を殺してしまった。


 俺がしたことは……正しかったのか。


 それとも、取り返しのつかない過ちなのか、これは。


 俺は――大きな罪を犯した。

 俺は――正当な行為をした。


 どっちだ?

 どっちなんだ?


 誰か、教えてくれ――。


 頭の中がグルグルと回っていた。




 どれくらい、その場に立ち尽くしていただろう。


「……これでよかったんだ」


 俺は自分に言い聞かせながら、大きく息を吐き出した。


「野放しにはできない。投獄したところで、こいつのスキルがあれば簡単に脱獄できる」


 ……いや、だけど牢にはスキルを封じる力があるんだったか?


 とはいえ、危険がゼロになるわけじゃない。


 俺は――剣咲が生きていることで予想される被害を、不幸を、すべて防いだんだ。


 俺の決断は間違っていない。


 もともと、この遺跡には俺のスキルを伸ばすために来た。


 けれど、さすがにこれ以上留まる気力はなかった。


 俺は、遺跡を後にすることにした。


 ただ――その前に、一つ確認することがある。

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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