表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/122

5 剣咲の変貌


「スキルが暴走しているのか……? 剣咲、とりあえず【獣化】を解くんだ」

「とっくに解いてる! なのに……くそっ、体が元に戻らねぇ!」


 剣咲が叫んだ。

 奴の外見はサイの獣人のままだ。


「えっ……?」


 どういうことだ……?


 まさか、剣咲は――。

 俺はハッと気づいた。


 サイの獣人の姿が『変身』ではなく……本体になってしまっている……!?


「お、おい、時雨、なんとかしろ……してくれ……」


 剣咲の声が急に弱々しくなった。


「俺、化け物になってるのか……?」

「剣咲――」


 俺はゴクリと息を飲んだ。




「ああああああああっ」




 絶叫とともに、剣咲は赤く血走った目で俺をにらんだ。


「殺す……壊す……お前ら、全部……」


 その声からは明らかに理性が失われていた。


 完全な暴走状態――。


「マスター、すでに奴はモンスター同然の存在に堕ちている」


 ミラージュが言った。


「討伐も選択肢に入れるべきだ」

「討伐……か」


 こいつには散々嫌な目に遭わされてきた。


 虐げられてきた。

 けれど、今はそんなこと関係ない。


 助けなきゃ――。


 俺の中に湧き上がるのは、その思いだけだ。


「大丈夫だ。今、助ける」


 俺は剣咲に言った。


 ただ、具体的にどうすれば――。


「マスター、一つ思ったことがある」


 声をかけてきたのは、死神だった。


「聖剣は持ち主と共鳴し、力を与える――おそらく、その力が大きすぎて受け止めきれないんだろう」


 と、説明する死神。


「結果、奴の中で『聖剣の力』があふれ、暴走している――」

「なら、その力をどこかに移してやればいいんじゃないか?」


 そんなことができるなら、だが。


「彼の『力』はあの角の辺りにわだかまっている」


 ミラージュが言った。


「なんとなくだが……『力』の流れを感知できる。以前よりも――」

「ツノ……か」


 俺は剣咲を見据えた。


「じゃあ、あのツノを斬り落とせば――」

「暴走が解ける可能性はあるな」


 と、死神。


「よし、全員の総力であいつを止めよう」

「殺した方が早いんじゃないか、マスター?」


 死神が言った。


「わざわざ元に戻すより、そっちの方が手っ取り早いし危険も少ない」

「……駄目だ。元に戻せる可能性がある以上、俺はそれに賭けたい」


 俺は首を左右に振った。


「殺すのは本当に最後の手段だ」

「……ふん。いちおう選択肢の中に『殺害』も入っているのか」

「最終的には、だよ。そりゃ、俺だって考えてるさ」




 そして――剣咲の暴走を止めるための作戦が始まった。




「おおおおおっ……!」


 剣咲が突進してきた。


 ソードマンとレッドメイジが魔力剣と火炎弾を放つが、当然のように通用しない。


 だが――、


 ごうっ!


 ひときわ大きな爆音とともに、火炎が燃え広がった。


「うっ……!?」


 そう、レッドメイジの火炎は牽制でも攻撃でもなく……『目隠し』のために使ったのだ。


 これで奴の視界から俺とミラージュ、死神が消えたはず。


 ふたたび捕捉される前に――。


 走れ!


 俺は二体にアイコンタクトの合図を送り、俺自身も走り出した。


 剣咲の背後に回り込む。


 死角からの攻撃でまず奴にダメージを与え、動きを鈍らせた上で、ツノを切断するつもりだった。


「がああああああああああああああっ!」


 剣咲の周囲に衝撃波が走った。



「ぐっ……!」


 今まで以上の――おそらくは最大出力の音圧衝撃波!


「【バーストスラッシュ】!」


 と、ミラージュが破壊の剣技を発動した。

 音圧を切り裂き、消し飛ばす。


「すごい――」


 同じスキルでも、基本的には俺よりもしもべの方が威力が高い。


 ミラージュの【バーストスラッシュ】の破壊力がここまでとは――。


「おおおおおっ!」


 剣咲とミラージュの叫び声が交差する。

 音圧衝撃波が吹き荒れ、ミラージュの【バーストスラッシュ】がそれをことごとく切り散らしていく。


 よし、今のうちに――。

 俺は剣咲の背後に回り込んだ。


 手はず通り、奴にダメージを与えるんだ。


「【バーストスラッシュ】!」

「ぐおおおおおおっ!」


 俺がスキルを放った瞬間、剣咲が振り返って音圧衝撃波を放ってきた。


「くっ……!」


 俺と剣咲の攻撃がぶつかり合う。


「このまま――俺の【バーストスラッシュ】で押し切れるか……っ!」


 だけど、俺の放った斬撃エネルギーの方がジリジリと押し戻されていく。

 このままじゃ、俺の方が押し切られる――!


「【フライングソード】! 【ファイアバスター】!」


 とっさに叫んだ。


 そう、普段はソードマンやレッドメイジに任せていたが、俺自身にも同じスキルがある。


 それを連打し、音圧衝撃波にぶつける――。


 ごうっ……!


 爆風とともに、剣咲の音圧衝撃波がはじけ散るのが分かった。


「おおおおおっ……!」


 突進する。


「これで終わらせる!」


 渾身の【斬撃】を放つ。


 ざんっ……!


 その一刀が、剣咲のサイの角を根元から斬り落としたのだった。

【読んでくださった方へのお願い】

面白かった、続きが読みたい、と感じた方はブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです……!

評価の10ポイントはとても大きいのでぜひお願いします……!


評価の入れ方は、ページ下部にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところにある

☆☆☆☆☆をポチっと押すことで

★★★★★になり評価されます!

未評価の方もお気軽に、ぜひよろしくお願いします~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼カクヨムでの新作です! ★やフォローで応援いただけると嬉しいです~!▼

忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ