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3 聖剣使いとの戦い


「があっ!」


 剣咲が叫んだ。

 その声が音圧の衝撃波と化し、俺に向かって突き進む。


「【シールド】!」


 俺はスキルで防壁を作り、それを弾いた。


「ソードマン、レッドメイジ! 撃て!」


 あの聖剣に近づくのは危険だ。


 まず遠距離攻撃で様子を見よう――という考えで、二体に命令を下す。


 ヴンッ!


 ソードマンが魔力剣を、レッドメイジが火炎弾を、それぞれ放った。


「はっ!」


 剣咲は聖剣を無造作に振る。


 発生した虹色の輝きが魔力剣と火炎弾をまとめて消し飛ばした。


「通じない――」

「ははっ、さすが勇者の剣だ。こんないいものがあるなら、王の奴も教えてくれればいいのによ!」


 剣咲が楽しげに笑った。



 確かに――。

 あの剣があれば、先日戦った中級魔族ブラッドクロウだって楽に倒せたかもしれない。


 どうして王様は聖剣のことを教えてくれなかったんだろう?


 あの剣のことを知らなかったのか?

 あるいは剣を使えない理由があるのか?


 後者だとしたら、考えられるのは――。


「今度はこっちからいくぜぇ!」


 剣咲が聖剣を手に近づいてきた。


「ソードマン、レッドメイジ!」


 牽制も兼ねて魔力剣と火炎弾を撃たせるが、いずれも剣咲の斬撃で簡単に弾かれてしまう。


 遠距離攻撃で仕留めるのは無理か――。


「剣咲、止まれ。それ以上近づくなら、命のやり取りになる」


 俺は奴に警告した。


「あ?」

「その聖剣は危険だ。俺も殺されるわけにはいかないから、全力で迎撃に行く」


 俺は剣咲をにらんだ。


「お前を『止める』ためじゃなく、『殺しても構わない』レベルの攻撃をすることになる」

「ほう!? 上等じゃねーか!」


 剣咲が口の端を吊り上げて笑った。


「お前にそんな一面があったとは驚きだよ、時雨ぇ! ははっ、お前のことが少し気に入ったぜ」

「お前は……殺し合いをしたいのか」

「俺は、俺を舐める奴を許さねぇってだけだ」


 剣咲が鼻を鳴らした。


「だからお前とランは許さねぇ。ランの方は投獄されてるからな……まずお前からだ時雨」

「俺を殺して、ランも殺すっていうのか?」

「そういうことだな」


 剣咲の笑みが深まった。


「俺を舐めたお前らを許さねぇ。何よりも――」


 その眼光がより鋭くなる。


「そんなお前らに、俺は精神的に屈した……ビビったんだ。だから俺は、そのときの俺を払拭するために、お前らを殺さなきゃならない」

「剣咲……!?」

「お前ら二人は存在しちゃいけないのさ。お前らがいる限り、俺は――惨めな俺自身から永遠に逃れられない!」


 ボウッ!


 剣咲の聖剣がまばゆい輝きを放ち、刀身がオーラに包まれた。


「さあ、消えてもらうぜ、時雨ぇ……!」


 剣咲は聖剣を構えなおした。


 いわゆる正眼の構え。

 剣道部だけあって、さすがに様になっている。


 全然隙がないように思える。


 さて、どう攻めこむか――。


 俺は剣を抜き、すぐ隣に死神を構えさせた。


「奴は手ごわい。俺とお前の同時攻撃で行こう」

「聖剣が相手か……」


 死神がつぶやく。


「どうした?」

「聖剣――その名の通り『聖なる剣』だ。あれには俺たちアンデッドを浄化する効果がある」

「浄化――」

「あれに斬られれば、よくて数百年単位で封印される。悪ければ完全消滅だ」

「っ……!」


 俺は絶句した。


「……分かった。俺が前に出よう」

「何?」

「お前たちは貴重な戦力だ。むざむざ消されるわけにはいかない」


 と、一歩前に出る俺。


「……変わっているな、お前は」


 死神がつぶやいた。


「マスターがしもべを守って体を張るなど聞いたことがない」

「そうか? 合理的だと思うが」


 俺は軽口を叩いた。


「とにかく死神は援護を頼む。それじゃ――」


 言うなり、俺は駆けだした。


 相手は【獣化】してるけど、それでも身体能力では俺が上だ。

 なんとか聖剣の攻撃をかいくぐり、奴に一撃を加える――。


「遅いぜ!」


 が、スピードでかき回そうとしたところ、あっさりと剣咲に先回りされてしまった。


「速い――!?」


 以前とは剣咲のスピードがまったく違う!


「へへ、この剣の力らしいな。俺はさらに強くなった! もうお前に負けることはありえねぇ!」


 剣咲が聖剣を繰り出す。


「くっ……!」


 俺は自分の剣でそれを受けた。


 がぎいっ。


 俺の剣の刀身が嫌な音を立てて歪む。


 ぎし、ぎし、と軋んでいる。

 まずい、剣がもたない――。


「このまま剣ごとお前をブッタ斬ってやるよ、時雨ぇ……!」


 剣咲がニヤリとして押し込んできた。


「うぐぐぐ……」


 鍔迫り合いでなんとかしのぐ俺だが、徐々に押し込まれてきた。


 ぴきっ……。


 刀身に亀裂が走る。

 このままじゃ両断される――。


「マスター!」


 死神が突っこんできた。

 さらにソードマンとレッドメイジがそれぞれ魔力剣と火炎弾を放つ。


 多少俺を巻きこんでも、とにかく剣咲を引き離そうというのだろう。


「無駄だ!」


 剣咲が吠えて生み出した音圧が、魔力剣と火炎弾を吹き飛ばし、さらに死神までも吹っ飛ばした。


 音圧衝撃波までパワーアップしている――!


「終わりだ、時雨!」


 剣咲がさらに力を込める。


 ――と、そのときだった。


 ポウッ……。


 聖剣を受け止めている俺の剣に淡い輝きが宿った。


「えっ……!?」


 驚く俺。

 同時に、


 おおおおおおおおおおっ……!


 咆哮が聞こえた。


 俺のすぐ側から。


「この声――」


 呆然と振り向く。


 そこには白銀の鎧を身に付けた騎士が立っていた。


「ミラージュ……!?」

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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