6 ランとの戦いに決着、そして
「こ、この……っ!」
ランが俺に向かって手を伸ばす。
奴のスキル名は【処刑】というらしい。
俺も詳しくは知らないが、その名の通り対人殺傷系のスキルなんだろう。
実際、ランは自分の気分に任せて、この世界の人間を何人も殺している――。
そんな噂を何度か聞いたことがある。
俺たちが異世界の勇者でなければ、とっくに処罰されるなり投獄されるなりしているだろう。
さっきのランの一撃を見れば、おそらくスキルの正体は『対象の範囲をえぐる攻撃』だ。
俺の【シールド】で防げるかどうかは分からないが、試したいとは思わなかった。
幸い、奴の視線や動きに注視していれば、攻撃を避けるのは難しくなさそうだ。
避けつつ、奴を無力化するだけの攻撃を加える――。
頭の中で基本方針を組み立てつつ、俺はランに肉薄した。
「く、くそ、時雨ごときが――」
ボウッ!
爆裂音にも似た音響とともに、『何か』が俺に向かって飛んでくる。
おそらく不可視の衝撃波なんだろう。
常人を超えるステータスを身に付けている俺は、ビリビリとした空気の震えを感知することも、それを感知してからの回避行動も問題なくこなすことができた。
「遅い!」
奴のスキル攻撃を横っ飛びで避け、ふたたび肉薄。
そして、みぞおちに拳の一撃を食らわせる。
「が……はっ……」
ランはその場に崩れ落ちた。
白目をむいたまま、ぴくぴくと体を震わせている。
失神したようだ。
「ふう……」
俺は大きく息を吐き出した。
「今のうちに彼を捕縛してください」
と、周囲に向かって呼びかけた。
「また暴走すれば、少なくない犠牲が出るかもしれません」
「で、ですが……」
「その、勇者様を捕縛するのは……」
演習場には数十人の兵士たちがいるけど、誰もが及び腰だった。
まあ、彼らの立場ならそうなるか……。
「じゃあ、縄だけ借ります」
演習場には武器や捕縛道具の類も置いてあった。
俺はそれを取って来て、ランを縛り上げた。
こいつのスキルは右手を突き出して発射してたし、そのポーズを取らなければ【処刑】を使えないのなら、とりあえず腕を縛って発射ポーズを取らせないようにしよう。
『【死神】がアンデッド状態になりました。しもべにしますか?』
突然メッセージが表示された。
えっ、これってまさか――。
俺は闘技場に視線を向ける。
ミラージュが奥義によって倒した『死神』が――。
ゆっくりと起き上がり、スーッと空中を滑るようにして俺の前までやって来た。
まさか……こいつをしもべにできるのか?
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