5 幻影の剣舞
その瞬間、ミラージュの剣の先端部が消滅し――。
ざくっ、ざくざくざくざくぅぅぅっ!
死神の背後に、剣先だけが出現して無数の刺突を見舞った。
死角からの連撃に、さすがの死神も避けられず、背中をハチの巣にされて吹き飛ばされる。
「ミラージュ……?」
「……捨て身の奥義、といったところだ」
ミラージュが俺を見た。
その体がゆっくりと薄れていく。
「己の存在と引き換えに一度だけ撃てる幻影技……威力は絶大だが、その代償は――」
「お、おい……!?」
「私自身の存在を大きく削る」
さらにその姿が薄れる。
「ミラージュ!」
「心配するな」
叫んだ俺に、ミラージュが言った。
「完全に消えるわけではない。とはいえ、当面はマスターの召喚に応えられない」
ミラージュの足が、腰が、消えていく。
「どれくらいの期間になるかは分からん。数年か、数十年……あるいはもっと……」
胸が、腕が消える。
「君に力を貸すことができなくなるのが……残念だ。そして、私自身のルーツの探求も……これで……」
「お、おい……!」
俺は思わずミラージュに手を伸ばす。
すでに残っているのは頭部だけ。
仮面の部分に手が触れるか触れないかというところで、
ばしゅんっ……。
ミラージュの姿は完全に消滅してしまった。
「ミラージュ……っ」
俺は唇をかみしめた。
思えば、俺のスキルが覚醒した後、こいつはいつも一緒にいてくれた。
一番そばにいて、俺を勇気づけてくれたんだ。
モンスターだけど、大半のクラスメイトよりずっと近しく、ずっと信頼できる存在だった。
そのミラージュが消えた。
いずれ復活するかもしれないが、それがいつかは分からない。
もしかしたら、何十年も何百年もかかるのかもしれない。
そうなれば、もう二度と会えないかもしれない――。
「何をボーッとしてやがる」
気が付けば、いつの間にかランが背後に立っていた。
「死神を倒すとはな」
ミラージュの消滅に気を取られ、奴の接近を察知できなかった。
ちらりと横に視線を向けると、倒れた死神はピクリともしない。
やはりミラージュの攻撃で死んだんだろうか?
そもそも奴が生物なのか、なんなのかさえ分からないが――。
「――次はお前だ」
俺はミラージュを失った悲哀をいったん胸にしまい、気持ちを切り替えると、剣を握る手に力を籠めた。
全身の力をたわめる。
直接的な戦闘能力なら俺の方が上だろうが、奴は『背後』という絶対的に優位なポジションを取っている。
俺と奴、それぞれに優位性があるわけだ。
あとは――どちらの優位性がこの戦闘の勝利に寄与するか。
それだけだ。
「しょうがないから俺が直接やるか――【処刑】」
「っ……!」
奴のスキルが発動する瞬間、俺はフルパワーで前方に跳んだ。
どんっ!
床が大きくえぐれるのが分かる。
俺の体は――無事だ。
どうやら奴のスキルが炸裂する前に、その効果範囲から逃れられたらしい。
「何……!?」
驚いたような顔をするラン。
「おおおおおおっ!」
着地した俺は、すぐに奴に向かって突進した。
第二撃が来る前に――決める!
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