13 合同演習4
俺は周囲を見回した。
近くにいた騎士たちは、さっきの【フライングソード】で全員倒している。
もう少し遠い場所から十人くらいの騎士が向かってきた。
さすがに勇者である俺は警戒されている。
取り囲んで倒そうという狙いか。
一方で、俺は【ファイアバスター】も【フライングソード】もさっき使ったばかりだから、しばらくは撃てない。
スキルには、いわゆる『クールタイム』が設定されていて、無限に連発できるわけじゃない。
そして俺が【ネクロマンサー】によって新たに身に付けたスキルは、クールタイムがオリジナルのそれより厳しく設定されているみたいだ。
スキル自体はオリジナルのものよりも性能が劣る、ということなんだろう。
まあ、それは仕方がない。
厳しいクールタイムを頭に入れた上で、手持ちのスキルをやりくりするだけだ。
それに――。
「お前たち程度なら!」
俺は剣を手に、騎士たちに向かっていく。
全員の動きがよく見えた。
スキルがなくても、俺はステータス自体が普通の騎士を圧倒しているのだ。
彼らの斬撃をかいくぐりつつ、俺はカウンターで剣を叩きつけていく。
「がっ」
「ぐあっ」
悲鳴を上げ、次々と倒れる騎士たち。
十秒足らずで、俺は十人の騎士をすべて打ち据えていた。
「くっ、なんで時雨がこんなに強くなってるんだよ!?」
戸惑いの声を上げながら、岸博信が突進してきた。
こいつはチャラ男のユージとは対照的に生真面目そうな顔をした小太りの男子生徒だ。
成績優秀でクラス委員もやっている優等生。
その手には輝く斧を持っている。
魔力で形成された斧――こいつが岸のスキルだ。
岸自身は運動音痴で体力もないが、この斧を握ったときだけ超人的な破壊力を発揮できる。
「【アックスブラスト】!」
その岸の破壊スキルが発動した。
「【斬撃】!」
俺は剣術のスキルを発動した。
正面からの力勝負なら、おそらく岸に分があるだろう。
俺のスキルは剣の『技術を増幅』する効果だが、奴のスキルは斧の『威力を増幅』する効果のはず。
「だったら――」
勝つ方法は一つ。
力勝負ではなく、技術勝負に持っていくことだ。
「うおおおおおおっ!」
雄たけびとともに岸の斧が振り下ろされる。
「くうっ……」
俺はそれを剣で受けた。
正面かあらではなく斜めに――同時に刃の角度を調節して、奴の一撃を受け流す。
「う、うわっ……」
攻撃の角度をずらされた岸は大きくつんのめった。
そこへ狙いすました拳をみぞおちに叩きこむ。
「ぐ……あっ……」
岸はその場に倒れた。
頭上に赤い光球が点滅している。
どうやら今の一撃で『死亡』レベルまでダメージを与えたみたいだ。
「な、なんで、俺の方がお前より強かったはず……なのに……」
「俺は成長したんだよ。いつまでも見下されっぱなしは御免だからな」
俺は小さく笑った。
これで勇者二人を撃破して、俺たちの軍がかなり有利になった。
あとは勝利まで一直線だ――。
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