12 合同演習3
俺の頭上には青い光球が浮かんでいる。
周囲を見回せば、味方全員に同じものがあった。
さらに言うなら、敵軍にもこれと同じものが付与されている。
この戦場には特殊な防御結界が敷かれていて、ここで受けたダメージは直接肉体を傷つけることはない。
その代わり『ダメージ数値』が計算され、一定のダメージを受けるとその者は『死亡』扱いになる。
その場合、頭上の光球が青から赤に変わる……という仕組みである。
要は、相手に『死亡』相当のダメージを与えれば、頭上の光球が赤になるということだ。
最終的に『青』……つまり『生存者』が多い方が勝ちになる。
――と、合同演習のルールを頭の中でおさらいしていると、
ごうっ!
前方から敵軍の魔術師たちの火炎が飛んでくる。
「【シールド】」
俺は防御スキルを発動した。
もともとはミラージュのスキルだけど、俺も【ネクロマンサー】のスキル効果によって同じスキルを使用できる。
いちおう萌の【トライウォール】が味方のいる場所全域にバリアを張ってくれていて、敵の飛び道具を全部防いでいるけど、それを乗り越えて届く攻撃がないとも限らない。
それに、敵の勇者が飛び道具を使ってくるかもしれないからな。
【トライウォール】に俺の【シールド】の二重防御の方がより安全だ。
「見えた――」
敵との距離はすでに100メートルを切っている。
前方には騎士たちが並んでおり、さらに先頭には一人の男子生徒の姿がある。
茶髪でチャラい雰囲気の金子雄二だ。
みんなからは『ユージ』と呼ばれている。
そのユージが俺に向かって右手の人差し指を突きつけるようなポーズを取った。
「時雨ごときが一人で突っこんでくるなよ」
嘲笑するユージ。
彼の指に黄金の光が宿り――、
「【サンダーボルト】!」
ばりばりばりっ!
俺や騎士団に向かって雷撃がほとばしる。
広範囲に稲妻を撃ちこむ攻撃スキル――これが金子の勇者としてのスキルだ。
「ぐあっ」
「ぎゃあっ」
周囲の騎士たちが稲妻に打ち据えられ、次々と倒れる。
ぴこん、ぴこん。
彼らの頭上に浮かぶ光球が次々に赤に変わり、点滅した。
『死亡』したという印である。
俺は、
「【ファイアバスター】!」
ごうっ!
渦を巻く炎が、雷撃を飲みこみ、打ち消した。
「何っ……!?」
驚くユージ。
攻撃系のスキル同士は、こうやって打ち消し合うのだ。
俺も、つい先日にレッドメイジを呼び出し、実験して知ったことだけど。
「【フライングソード】!」
さらに俺の追撃。
空中に無数の魔力剣を生み出し、敵陣に撃ちこむ。
「ひ、ひいっ」
攻撃スキルを撃った直後のユージはなすすべもなく斬り刻まれた。
といっても、フィールド全体に結界が敷かれているため、実際にはほぼノーダメージのはずだ。
ぴこん、ぴこん。
【フライングソード】を食らったユージや周囲の騎士たちの頭上で、光球が赤く点滅していた。
「やべぇ、こんなあっさり俺が……時雨に負けた……!?」
「つ、強い――」
呆然とするユージと騎士たち。
よし、やれる。
俺は手ごたえをつかんでいた。
ミラージュたちに頼らなくても、俺自身の攻撃能力でも十分に戦っていけるぞ――。
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