10 合同演習1
その日の夜、俺は自室でミラージュを呼び出し、話していた。
「合同演習、苦手なんだよな」
話題は明日行われる合同演習のことだ。
「それは他の勇者たちと一緒に演習をするということか?」
たずねるミラージュは俺を心配するような雰囲気を漂わせていた。
どうも他のしもべと違い、こいつだけは人間らしい情緒を残しているらしい。
他の――たとえばソードマンやレッドメイジは元人間とはいえ、今は単純な感情しか残っていない。
俺の命令を実行するだけの知能は持ち合わせているものの、こうした相談をするのは無理だった。
で、こうしてミラージュと話しているわけだけど――、
「俺、いつもみんなについていけなくて。落ちこぼれだの役立たずだの馬鹿にされるのがいつものパターンなんだ」
「君がみんなについていけない?」
「スキルが進化するまで、俺のステータスはクラス内で一番低かったからな」
苦笑する俺。
「まあ、今の俺なら……大丈夫だとは思うんだけど、やっぱり今までのことがあるからさ。何となく不安で……」
「大丈夫だ。君は、強い」
ミラージュが言った。
その力強い声音は、俺を元気づけてくれた。
「自信をもって挑むといい。私には見える。君の実力に驚く他の勇者たちの顔が――」
「……ありがとう、ミラージュ」
俺は礼を言った。
「お前のおかげで勇気が湧いて来たよ」
さあ、ミラージュに言われた通り、自信をもって明日の演習に臨むとしよう――。
そして翌日。
合同演習の日がやって来た。
演習の内容はシンプルだ。
一つの部隊に騎士100人、魔術師20人を配置。
それを勇者3人が指揮し、部隊同士で模擬戦闘を行う。
模擬戦闘のフィールド内にはダメージを軽減する結界が張られていて、まず死ぬことはない。
また、受けたダメージを数値化する魔法装置を全員が装備し、一定ダメージを受けた時点でフィールドから退場する。
最終的に相手を全滅させるか、制限時間終了時に相手部隊より生存人数が多ければ勝利である。
「よ、よろしく、時雨くん」
「ちっ、時雨かよ」
一緒に組むことになったのは二人の女子生徒だった。
一人は先日の中級魔族討伐戦でも一緒になった女子である。
あのとき、俺が他のメンバーを救い、中級魔族を倒したからか、彼女は俺を馬鹿にするような態度ではなくなっていた。
名前は進藤萌。
明るい茶色の髪を肩のところで切りそろえ、メイクは派手め。
いわゆるギャル系の容姿をしている。
勇者としてのスキルは三種類のバリアを使い分ける【トライウォール】だ。
もう一人はあからさまに俺を見下している様子だった。
名前は瀬良セイラ。
180センチ近い長身でバレー部に所属している。
気風のいい性格で女子にもファンが多いらしいけど、俺に対しては辛辣だった。
勇者としてのスキルはバレーボールを模した『操作可能な光弾』による攻撃――【コントロールボム】だ。
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