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8 立場逆転


「ゆ、許してくれぇぇぇぇぇ……!」


 剣咲がいきなり俺の前に這いつくばり、床に額を擦りつけた。


「け、剣咲……?」


 俺は呆気に取られて、ほとんど土下座状態の剣咲を見下ろしていた。


 ――何かの罠だろうか?


 俺はまずそれを疑った。


 あの粗暴な剣咲がいきなり謝罪するのは、明らかに変だ。

 やけにおびえているのも、演技のような気がする。


 剣咲って、そんなキャラじゃないしな。

 だとすれば、どういう意図があるのか――。


「ひいいいいい、とにかく、助けてくれ……っ! 俺は降参するから――」


 これでは完全降伏だ。


 およそ剣咲らしくない。


「俺よりも那由香に謝ってくれ。それから彼女には二度と強引に迫らないと誓うんだ」


 とりあえず俺は剣咲をそう説き伏せることにした。


「わ、分かった。那由香、悪かった……」

「う、うん、別にいいよ……」


 剣咲の謝罪を、那由香は素直に受け入れたようだ。


「じゃあ、話はこれで終わりだな。もう那由香に無理強いしたり、俺を殺そうとするなよ、剣咲」


 俺は一応釘をさしておくことにした。

 今後も襲われては、対処が面倒だ。


「お前のスキルで俺を殺すのは無理だって分かっただろ? 今後、もし那由香に手を出したら――」


 じろりとにらむ。


「そのときは『殺し合い』だ。結果がどうなるかは予想がつくよな?」

「っ……!」


 剣咲の表情がひきつった。


 こいつが、俺に対してこんな表情を浮かべるなんて、な。

 今までいじめられていただけに、スッとする気持ちがないわけじゃない。


 だけど、俺が感じたのは後味の悪さだ。


 やっぱり――暴力は気持ちがいいものじゃないな。


「わ、分かった。もう何もしない……しない……」


 剣咲は震えながらつぶやいた。


 青ざめた顔のまま立ち上がり、俺から後ずさる。


「じゃあな、時雨……も、もう行くから、俺……」


 剣咲は逃げるように去っていった。




「助けてくれてありがとう、時雨くん」


 那由香が俺に礼を言った。


「無事でよかったよ。これに懲りて、君に乱暴な真似をしなくなるといいんだけど、あいつ……」

「相当怖がってたし、大丈夫じゃないかな?」


 那由香が言った。

 ただ、その顔に笑みはない。


「あいつ、俺を殺そうとしていた」


 俺も笑う気にはなれなかった。


 本当は、クラスメイトたちと仲良くしたいんだ。

 でも、なかなか上手くできない。


 中級魔族を討伐した後、生き残ったクラスメイトたちは俺に感謝してくれたし、そうやって周囲の信頼を積み重ねれば、いずれは――。


 俺はもう一度那由香を見つめた。


 彼女のように、俺を見下すことなく接してくれる人が増えることを――願ってやまない。


 ……がんばろう。

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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