7 剣咲、屈辱を受ける2(クラスメイト視点)
「くそがっ! てめぇごときに……俺が負けるわけがねぇっ!」
剣咲は怒声を上げて走った。
相手が四人だろうと、関係ない。
そもそも標的は時雨一人だ。
彼さえ倒せば、自分の勝ちだ――。
が、時雨の前に銀の騎士が立ちはだかり、剣咲の突進を食い止める。
先ほどと同じくエネルギーの盾のスキルだ。
「ちいっ! るおおおおおおおおおおおっ!」
剣咲は跳び上がり、上空から音圧衝撃波を放った。
「【シールド】!」
が、そこは時雨がカバーしている。
前方は銀の騎士が、上空は時雨が防ぐという役割分担にしたようだ。
「なら、接近戦で!」
着地した剣咲がふたたび突進する。
ばしゅしゅっ!
ごうっ!
しかし、今度は青の騎士と赤の魔術師がそれぞれ魔力剣と炎を放ち、剣咲を近づけさせない。
一方的にダメージを受け、吹き飛ばされる剣咲。
「ちくしょう……」
体のあちこちが切り裂かれ、焼け焦げ、さすがに動きが鈍くなってきた。
先ほどから一方的にいたぶられていた。
【獣化】のリミッターを最大限に外しても、とにかく四者の連携攻撃の前に間合いを詰めることさえできないのだ。
こいつ、強い――。
認めざるを得なかった。
「剣咲、まだやるのか?」
時雨が剣を構えた。
「お前は俺を殺すと言ったけど――俺がお前を殺すと言ったらどうする?」
「っ……!」
剣咲は心臓が止まるような衝撃を覚えた。
心のどこかで高をくくっていた。
こちらは時雨に殺意を抱いても、時雨がこちらに殺意を持つことはないだろう、と。
だが今、時雨は冷ややかな視線を剣咲に向けていた。
殺意のこもった視線――剣咲にはそう感じられた。
「剣咲……」
時雨が近づいてくる。
その隣には銀の騎士がいる。
彼らの後方では青の騎士と赤の魔術師が攻撃態勢に入っている。
駄目だ、勝てない――。
剣咲は、認めざるを得なかった。
なら、この戦いの落としどころはどうなるだろうか?
これが立場が逆なら――剣咲は自分の気が済むまで相手を打ちのめし、そのうえで相手が降参なり謝罪なりをするまで攻撃を止めないだろう。
それもちょっとやそっとの謝罪ではなく、それこそ相手の尊厳を根こそぎ奪い取るレベルで屈服させるまで痛めつける。
なら、時雨は――。
(俺があいつに屈服するまで、あいつは俺を痛めつける……!?)
ありうる、と思った。
彼はこれまで時雨をさんざんいじめてきた。
相手からしたら剣咲への恨みは骨髄だろう。
「剣咲」
時雨が数メートルの距離まで近づき、足を止めた。
攻撃が、来る――。
その瞬間、剣咲は半ば無意識に、その場に這いつくばっていた。
「ゆ、許してくれぇぇぇぇぇぇ……!」
自分で自分を抑えきれない。
自分の心が恐怖に負けた――屈辱の命乞いだった。
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