8 中級魔族討伐戦3
「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいっ!?」
鈴木が絶叫した。
「田中! いやぁぁぁぁぁぁっ!」
「次、お前」
ブラッドクロウが短く告げ、こちらに向かって歩き出した。
「く、くるなぁぁぁぁっ!」
鈴木が炎を放つ。
だが、スキル攻撃をものともせず、ブラッドクロウが前進する。
地を蹴り、一気に加速した。
速い――!
十メートルほどの距離を、まさしく一瞬で移動してきた中級魔族は、
「いただきまーす」
がぶりっ!
巨大な口を開き、鈴木を丸のみしてしまった。
すべては、一瞬の出来事だ。
ぐちゃっ、ぐちゅっ、ばりぼり、ばりぼり……。
嫌な咀嚼音が響き渡るのを、俺たちは見ていることしかできなかった。
六人で来た討伐隊が、あっという間に四人になってしまった。
「全員、食う……殺して食う……そのまま食う……焼いて食う……うけけけけけ」
ブラッドクロウが笑う。
「ひいいいいいいい!」
俺以外の三人のクラスメイトは、いずれも恐怖の悲鳴を上げていた。
腰を抜かしたのか動けないようだ。
ブラッドクロウが俺たちを順番に見回す。
「次に食うのは……だーれだ」
おどけた調子の台詞が、逆に恐怖を誘った。
他のクラスメイトたちは体がすくんでいるのか動けない様子だ。
このままでは全員、食われて殺される――。
俺はゴクリと喉を鳴らした。
そうだ。
これはゲームじゃないし、漫画でもない。
俺たちがやっているのは命懸けの討伐任務。
殺されることもありうる、『リアル』な『戦闘』なんだ。
「次は俺が相手だ」
俺はブラッドクロウに告げた。
「ほう。お前だけは俺を怖がってないな」
ブラッドクロウが俺をにらむ。
「恐怖に震えさせてから……食う」
「食われてたまるか――出ろ、ミラージュ!」
ヴンッ……!
俺の声に応じて、足元の影が伸び、そこから白い騎士が現れた。
がきいん。
ブラッドクロウが右腕を伸ばし、繰り出した爪を、ミラージュが盾で止めた。
ほぼ同時に斬撃を放ち、ブラッドクロウの右腕を肘の辺りから斬り飛ばす。
「ぐぎゃあああああっ」
ブラッドクロウは絶叫した。
ミラージュを警戒したように、大きく後退する。
よし、今のうちに――。
「みんな、早く逃げろ! それと町の人たちの避難を頼む!」
俺はクラスメイトたちに呼びかけた。
「お、お前はどうするんだよ」
「俺はここに残る」
と、宣言する。
「あいつを食い止める。放っておいたら、町の人たちが襲われるだろ」
「無理だって! 田中と鈴木が殺されたんだぞ!」
「俺たちは『勇者』だろ。人々を守るのが仕事だ」
「は、はあ? 何言ってんだ。こんな世界のために命を懸ける義理なんてねーだろ!」
「義理じゃない」
俺はそいつに言った。
「俺がそうしたいから、そうするんだ」
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