7 中級魔族討伐戦2
「あ、あれが中級魔族……!」
田中がうめいた。
「いつもの下級魔族と全然違うわ……」
鈴木もうめいた。
「な、なーに、俺たち【勇者】だぜ? 下級だろうが、中級だろうが敵じゃねーよ!」
「……いや、慎重にいった方がいい」
俺は田中をたしなめた。
「これはゲームじゃない。命懸けの殺し合いだ」
実際、田中たちは『楽勝』の戦いしか経験してないだろうけど、俺は違う。
ダンジョン内で死にかけたことがあるだけに、彼の気楽さが気になった。
なんというか――自分が死ぬことになるとは夢にも思っていない、という雰囲気があるのだ。
だけど、今俺が田中に言ったように、これはゲームじゃない。
敵の攻撃が自分に届けば傷を受けるし、最悪の場合は……死ぬ。
それに加え、この間の那由香の予知のこともある。
『私たちの誰かが死ぬ』
彼女の予知は、遠い未来になればなるほど精度が落ち、外れる可能性も出てくる。
とはいえ、やはり気を付けるべきだろう。
もしかしたら、この討伐戦で誰かが死ぬかもしれない。
最悪の場合、全滅するかもしれない。
「まず陣形を組んで、確実に防御や治癒ができる態勢を整えよう。その状態でまずは奴の体力を削って――」
「はあ? 時雨のくせに作戦指示とか、調子に乗ってんじゃねーぞ!」
田中がいきなりキレた。
「さっきからなんなんだよ、お前! テンション下がっちまうなぁ、ええ?」
「これはゲームじゃない、と言ったはずだ」
「魔族なんて今まで全部一撃でぶっ殺してきたんだよ! 弱っちいお前と違ってな!」
田中が怒鳴った。
「いくぞ、鈴木」
「了解。でも慎重にね」
「分かってるって――【フライングソード】!」
田中の手から剣が飛んだ。
魔力を剣の形に変え、射出するスキル――【フライングソード】。
一度射出した後も、その魔力剣は自分の意志で自由に操作できる。
空中を不規則に動き、何重にもフェイントをかけながら、魔力剣が【ブラッドクロウ】を切り裂いた。
ぐおおおおおおおおっ……!
怒りの咆哮を上げる魔族。
そこに、
「次はあたしよ――【ファイアバスター】!」
鈴木の手から火炎の塊が飛び出した。
ごうんっ!
直撃し、大爆発する。
「俺の剣とお前の炎――この二連撃なら、中級どころか高位魔族だって敵じゃねーよ!」
炎が晴れると、全身黒焦げになった魔族が地面に倒れていた。
絶命しているようだ。
どうやら中級魔族といっても、『勇者』であるクラスメイトたちの前には、それこそ田中の言うように『敵じゃない』のか。
――いや、何か様子がおかしい。
俺は嫌な予感がして、もう一度ブラッドクロウを注視した。
ぴくり、とその体がわずかに震える。
こいつ――まだ生きてる!?
「はははははは! 魔族なんてこんなもんだ!」
一方、田中は得意げに笑っていた。
ざんっ……!
いきなり、その首が宙に舞った。
「は……?」
田中は信じられないといった表情のまま、首だけが地面に転がる。
ブラッドクロウがゆっくりと起き上がった。
その腕が異様なほど長く『伸びて』いる。
田中の首を刎ね飛ばしたのは、伸びた腕の先端にある鋭い爪だ。
「た、田中……」
俺は呆然と立ち尽くす。
クラスで初めての犠牲者だった。
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