6 中級魔族討伐戦1
「ねえ、聞いた? 中級魔族が現れたんだって」
翌朝、俺は那由香からそのニュースを聞かされた。
「ああ、俺は王様から昨日その話を聞いたよ」
「私たちの中から討伐チームを作って派遣するって」
「初めての中級戦か」
今までは下級魔族ばかりだったし、はっきり言って楽勝だった。
だけど、これからはどうなるか分からない。
中級、上級――そしてその頂点に君臨する魔王。
そいつらをすべて倒さない限り、人類の勝利はない。
そして人類が勝利しない限り、俺たちが元の世界に帰還することはない。
「全員で生きて帰りたいよね」
「ああ、必ず」
俺たちはうなずき合った。
そうだ、魔王を倒し、俺たちは絶対に全員無事で帰還する。
「でも、やっぱり不安があるの……」
那由香の表情が暗い。
「まあ、中級が下級と比べて、どれくらい強いのかは未知数だからな……」
「それもあるけど」
那由香が俺を見つめる。
目が泳ぎ、何かを躊躇しているような表情だった。
「どうした?」
「うん、その……私のスキルのこと、時雨くんは知ってるよね?」
「【未来予知】……だよな?」
「うん。ごく近い未来なら100パーセントの確率で見通せるし、逆に未来が遠くなればなるほど、ぼんやりとした映像が見えたり、断片的な声が聞こえる程度に精度が落ちる――」
那由香が解説する。
その顔が青ざめていた。
「……何か嫌な未来が見えたのか?」
「あくまでも断片的な映像だよ? ただ、たぶん……」
一拍置いて、那由香は言った。
震える声で。
「私たちのクラスの誰かが死ぬ……!」
――二日後、俺は中級魔族討伐メンバーの一人に選ばれた。
他にはクラス内から五人が選出され、俺を入れて合計で六人のメンバーが討伐に挑む。
事件のあらましはこうだ。
数日前、中級魔族一体がこの付近の町を襲った。
その町の住人は皆殺しにされ、さらに近隣の町が三つ、同じように全滅した。
そこで俺たち『勇者』に討伐命令が下ったわけだ。
すでに近隣の町を合計で四つ滅ぼしたその魔族は、街道沿いに移動しているという報告があり、俺たちはその道中で待ち構えていた。
「――来たぞ」
クラスメイトの一人……田中が前方を指さした。
野球部に所属していて、快活な性格をしている。
運動部に所属する人間とは大体仲がいいんだけど、逆に文化系の部活をやっている人間には『見下し』の態度を取ってくる奴だ。
特に俺に対しては、何かにつけて見下してくる。
「足引っ張るなよ、特に時雨」
田中がふんと鼻を鳴らした。
一瞬嫌な気分になるが、いちいち腹を立てても仕方がない。
今は討伐任務に集中だ。
俺はあらためて前方に視線を向けた。
街道の向こう側から黒いモヤをまとった怪物が近づいてくる。
身長3メートルほどの人型で、がっしりした体格だ。
頭からはねじれた角が一本生えている。
あれが――【ブラッドクロウ】。
俺は息を飲んだ。
初めて見る『中級』は、さすがに威圧感が段違いだ。
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