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5 俺と那由香

「助けてくれてありがとう、時雨くん」


 那由香が俺を見つめた。


「それと――おかえりなさい。よかった……無事で」


 急に涙ぐむ那由香。


「心配かけたか?」

「あ、当たり前でしょ!」


 那由香にしては珍しく、声を大きくした。


「……悪かったな」

「ううん。戻ってきてくれてよかった」


 那由香が微笑む。

 泣き笑いだった。


「那由香――」


 俺もちょっと泣きそうになってしまった。


 俺を心配して涙を流してくれる人が、ここにいるんだ。


 寄る辺のない異世界だけど、彼女の存在が本当にありがたいし、心強いし、感謝の気持ちが湧いてくる。


「お、おい、本当に時雨なのか……?」


 と、他のクラスメイトたちもやって来た。


「お前、剣咲相手によく立ち向かったな……」


 感心している者もいた。


「まあ、那由香が絡まれてたし……」


 俺はちょっと照れながら言った。


「あ、そうだ。王様にも帰還の挨拶をしておくか」




 ――というわけで、謁見の手続きをすると、すぐ会ってもらえることになった。


 王様って朝から晩まで多忙らしいんだけど、俺たちに対しては最優先で面会してくれる。


「ただいま戻りました、王様」

「おお、無事で何よりだ。君が行方不明になったと聞いて、私も心配していたぞ」


 王様が安心したように言った。


 いかにも穏やかな性格のおじさんといった風貌だ。


 王としての威厳はあるけど、それ以上に伝わってくるのは善良さだった。


 とはいえ――この人、俺たちを召喚した際には、色々とあったから全面的に信用するわけじゃない。


「ちょっとした事故がありまして、俺だけがはぐれてしまったんです」


 俺はクラスの連中に追放されかけたことは隠し、無難な説明を心掛けた。

 わざわざクラス内の内紛を異世界人に知らせる必要はない。


「そうか。いや、勇者殿に何かあってはならないと我々も捜索隊を募っていた最中でな」

「わざわざありがとうございます」


 俺は一礼した。


 捜索隊?

 本当にそんなものを差し向けようとしていたんだろうか?


 分からない。


 とにかく、この世界の人間は――信用ならないんだ。


 表面上は俺たちを『勇者』と崇めるが、内心でどう思っているかは分からない。


 俺たちのことを利用するためのコマとしか思っていない可能性も十分ある。


「ところで……魔王軍の方に動きがありそうだ」


 王様が話題を変えた。


「今までは散発的に下級魔族がこの世界を襲ってきただけだったが――数日前に、とうとう『中級魔族』の襲来が確認された」

「中級魔族――」

「そのうちの一体は、この国に向かっているという報告がある。後ほど、君たち勇者の中から選抜し、討伐チームを組もうと考えている」


 俺たちがこの世界に召喚された元々の理由は『魔王討伐』だ。


 普通の人間は下級魔族にすら太刀打ちできないから、それを狩るのが俺たち『勇者』の役目だった。


「いずれ訪れる全面戦争――そのために強い勇者は一人でも多く必要だ。今回の中級魔族討伐戦は、君たちの資質が試される一戦になる」


 王様が俺を見つめる。


「君に期待しているよ、時雨くん」

「……俺のスキルランクはクラス内で一番下ですよ」


 俺は自嘲気味に笑った。


「今は、だろう? 勇者のスキルは成長する」


 王様がニヤリと笑った。


 ……ん?

 もしかして王様、俺がスキルの次の段階を解放したことに気づいてる?


「かつての勇者の中には自らのスキルをさらに磨き、当初のスキルとはまったく別物といえるほど強力に成長させた者もいる、と文献にある。スキル第四段階に達した、とあるが、私には意味がよく分からなくてな……君なら分かるか、時雨くん」

「……さあ、俺にもよく分からないです」


 首を左右に振る。


「ふむ。君がそう言うなら、そうなのだろう」


 王様は、またニヤリと笑った。

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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